第1章 降伏

この他にも充分沢山の小説を書いている途中なのですが、このDA2ゲーム後のAU(Alternate Universe)に関するアイデアが頭から離れようとしません。K!memeをチェックしたら、まさに私の心の中にあるシナリオとぴったり合致するリクエストが残っていました。以下のプロンプトです。

「チャントリーの爆破後、ホークはアンダースを助命し、彼に立ち去るように伝えた。セバスチャンは怒り、みんなも知っているとおり、彼の軍隊を率いてメイジを狩り立てて復讐を図ると誓った。
しかし、この誓いは、結局は不要なものとなった。数週間後、アンダースがスタークヘイブンに現れて自ら降伏したのは、何よりもセバスチャン自身が驚く所だった。
彼はこの事態にどう対応するだろうか?」

現時点でこのアイデアがどう進むか、彼ら男の子達の関係がどうなるか、エロいシーンがどの位あるかは未定なので、区分T(ティーンズ)で開始します。(翻訳者注:途中でマチュア指定となりました)


祝福あれ、彼らに立ち向かう者
堕落し邪悪なる者の前に立ち怯まぬ者
祝福あれ、平和を護る者、正義の英雄よ

祝福あれ、高潔な者、暗黒の中の光たる者よ
彼らの血で主の御心は記されん

- 祝福の書 第4章10-11


セバスチャンはスタークヘイブンへと帰還し、二つの驚くべき物と遭遇することになった。最初の一つは、大司教エルシナからの手紙であった。彼女の死の数日前に書かれたと考えられた。もし二つ目の物が、この手紙よりも先に到着していたならば、物事の進み方が実際に起きたこととは違う様相を呈していただろう事は間違い無かった。

セバスチャンは目を閉じて暖炉にもたれ掛かり、手紙の中の言葉を彼の目の中で再び繰り返していた。数日前にスタークヘイブンに到着し、その手紙が彼を待っているのを見つけてからというもの、彼は幾度となく手紙を読み返していた。その言葉は既に記憶の中にあり、彼の心に深く刻まれていた。エルシナの彼への最後の言葉、カークウォールでの最後の緊張高まる数日間の間に、彼が教会を訪れた際に彼女と交わした日常の会話とは異なる、心からの慰めと導きを与える言葉であった。


親愛なるセバスチャン――このような事を言うべきでは無いと判ってはいますが、他のどの信徒よりも愛しいあなたに――この先に待つ暗黒の日々を恐れるが故に、この手紙を送ります。地平線の彼方はあまりに暗く曇っていますが、カークウォールの高まりつつある緊張は、テダスにおいて巨大な力が蠢いている、その徴候だというのは明らかです。同時に、恐らく私はこの嵐を生き延びることは出来ないだろうと言うことを、あなたのために残念に思います。私が間違っている事を主に祈りましょう、しかしもし正しかった時のために、いつものように備えをしておきましょう。

もし私が正しかった場合、あなたが紋章を身にまとい、統治者となるためにスタークヘイブンへ戻った時に、この手紙が待っていることになるでしょう。あなたがいずれスタークヘイブンの統治者となる事を、私は一度も疑った事はありませんでした。あなたの心が自ら正しい道へと導かれるのを待っていました。教会はあなたに外界からの庇護を、慰めと人生のやり直しをする時を与えました。今やあなた自身の足で立ち、スタークヘイブンの民の守護者として、思いやりと公正さを持って彼らを統治する、その時が来たと信じています。後はあなたが自らの力と、メイカーのご意志の元にこの役割が定められたことを認め、そしてヴェイル家の責務を背負うのみです。それが重責であるのは間違い有りません。指導者たることが容易いことでは無いのは、私も良く知っています。

私がただ一つ恐れるのは、あなたが容易く怒りに身を任せがちであることです。それを支配することを学ばねばなりません、さもなくば怒りがあなたを支配し、暗黒の道へと陥らせることでしょう。復讐を求めてはなりません、悪意の赴くまま行動してはなりません、それらはまさに悪魔があなたの心に忍び込み、獲物を見つけるのを助ける事となりましょう。強くありなさい、セバスチャン。スタークヘイブンをこの先に待ち受ける暗黒の日々の中、嵐に追われ逃げ惑う人々にとって平安と休息の場として欲しいのです。

この先に待ち構えるものが、クナリのような外の異教徒との争いなのか、あるいは内なる信者達の間での、メイジとして産まれた者による教会への異議申立となるのか、または絶望した貧しい者たちと、享楽を恣にする豊かな者たちとの争いなのか、抑圧され見捨てられたエルフの反乱なのか、私にも見通すことは出来ません。しかしいずれにせよ、この先に戦争が待ち受けている事を恐れています。もしかすると、これらの全てが入り交じった混沌、その暗闇に世界は陥ろうとしているのかも知れません。

あなたの街を嵐の中の静かなる目にして欲しいのです、もし出来る事なら。強く、公正でありなさい、そしてとりわけ寛大で慈悲深くあるように。寛大さと慈悲の心こそ、私たちを待ち受ける暗黒の日々で一番得られないものでありましょうから。

心からあなたを思っています、セバスチャン。どのような事になろうとも、あなたの未来に幸多かりしことを祈ります。

平穏で有らんことを、我が息子よ。

~ エルシナ、カークウォール大司教


結びの言葉は何よりも心痛むものだった。彼女が宗教的な意味でその言葉を使ったに過ぎないという事はよく判っていた。カークウォールの大司教である彼女は、教会の全てのシスター及びブラザーに対する母でもあった。しかし、彼に生を与え、悪魔に取り憑かれたハリマン家の裏切り者の手に掛かって、何年も前にここスタークヘイブンで亡くなった女性よりも、エルシナ大司教は彼にとって遙かに母親という存在に近かった。彼女も心の中では彼のことを、自ら慈しみ教え育て上げた息子だと感じていただろうと、彼の心はどこかで信じたがっていた。

ノックの音が聞こえた時、彼はまだ彼女の言葉について考えていた。
「入れ!」と彼は言った。衛兵隊長が入ってきた。街中の裏通りで悪行に耽っていた当時の彼を城へと引きずり戻しにやってきた衛兵の一人として、今よりも若かった頃の隊長の顔を、彼は辛うじて覚えていた。

「何か、隊長?」かつてのだらしのない末息子が、今やスタークヘイブンの統治者になろうとしている事を、この男がどう思っているか知りたいものだと思いながら、彼は尋ねた。

「恐れ入ります、殿下、その…城の正門前で騒ぎがありまして。ある男が中に入れろ、殿下と話をしなくてはならないと言い張るのです。メイジです」

「アポステイトが?」セバスチャンは鋭く尋ねるとともに立ち上がった。
「ここに何の用があるというのだ?」

「降伏するためさ」彼の後ろから、あまりに聞き慣れた声がそう言うのが聞こえた。セバスチャンは振り返ると、アンダースが扉のすぐ向こうに立っているのを見て大きく口を開けた。左右の衛兵は彼の両脇を抱え、三人目が彼の刃付きの杖を抱えて後ろに立ち、更に少し離れたところに、二人の衛兵がクロスボウを番え、彼の胸板を狙って立っていた。

「アンダース!」セバスチャンは驚いて叫び、片手は既にベルトに挟んだ短剣へと伸びていた。
「貴様、ここで何をしている?」彼は嫌悪と疑いに満ちた声で尋ねた。

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