8.鋳物労働組合、ストライキを警告

俺達が上町に戻ったときには街灯に灯りが点っていた。裁判所に警察、市庁舎は皆同じ区画にあり、ケーブルカーから降りながら俺は市庁舎の立派な柱を感心して見上げた。フェンリスと俺はお互いに、いずれそのうち相手を叩きのめしてやるという暗黙の了解に達していて、上町へと帰る道のりはごく平穏なものだった。

俺はその日を待ち望んでいたが、何故そうなったかという理由については考えまいとした。

俺達は警察署の前階段を駆け上がった。この時間でさえ署内はひどく混み合っていた。制服警官が悪態を付く酔っ払いを怒鳴りつけ、窓口では女が泣きながら係員に何か訴え、もちろんそこら中警官だらけだった。俺はポケットに手を突っ込み、いかにも真っ当な用件があるように急ぎ足で連中の前を通り過ぎた。

「おい!」俺は後ろから係員が声を掛けるのを聞いて、やつのいそうな方向に向けて偽物のフェラルデン私立探偵ライセンス・カードを振ってやった。

フェンリスは俺達が特に咎められることもなく、警察署内をスタスタと歩いて行けることにちょっとばかり驚いたようだった。俺は事務机の一つに近寄った。

「アヴェリン巡査は?」ちょうど帰り支度のところか、外套と帽子を手に持った警官に俺は声を掛けた。彼は後ろを指さすと、さっさと出ていった。

アヴェリンは机に座って、その前で彼女を罵っている女を睨め付けていた。後の方の女は、どう見ても警官じゃあ無かった。高そうな真っ赤なドレスの上に一級品の毛皮のストール、髪の毛は多分流行の髪型に高く結い上げられていた。過去10年の間に一度でも笑ったことがあれば、彼女も多分美女に見えただろう。

「新米警官に邪魔はさせないよ。あんたが身の程を弁えてるなら、大人しく机に座ってろ。あたしらはね、公務で動いてるんだ、判る?あんたがその鼻っ面を突っ込むのを喜ばないお偉いさんがいるってことだ。あんたは下っ端。忘れるんじゃ無いよ」
そう言いながら彼女は身を翻し、俺達の方を見もせずに押しのけてヒールの音高く歩み去った。

アヴェリンは立ち上がり、机に両掌を付いておっそろしい顔付きをしていた。
「お偉いさん」彼女は歯ぎしりしながら言うと、首を回して俺の方を見た。
「何か見つけたのね、トリップ。そうだと言ってちょうだい」

俺はニヤリと笑った。
「ああ、見つけたよ」

俺達は今日の発見を全て彼女に話し、アヴェリンはその後で机の後ろに座り込むと大きく息を付いた。
「シェイマス・ドゥマーはドゥマー市長の一人息子よ」

「すると連中が言っていたのは本当だったか。市長がやつらに彼を追いかける指示を出したと」

「連中の邪魔をする者には不幸な話だ」とフェンリスが言った。

「だけどシェイマスが行方不明だとしたら、私達の仕事になるはずよ」とアヴェリンが言った。

「もし彼が本当に行方不明だとしたらな。クナリは、彼がどこに居るか知っているし、居場所やあるいは誰がそのことを知っているかについても、特に気に掛けていないようだ」

「すると彼は自分から出かけていったというの?真相が何であれ、ウィンターズは土足で踏み荒らして泥水を辺りに撒き散らす。連中は最悪の犯罪者集団よ」とアヴェリンは言った。
「とにかく、この件に関して市長秘書達のやったことは大目に見るとしても、ウィンターズの連中は止めないといけない。もし連中がホンの僅かでも力を持てば、ドゥマーは関わり合いになったことを大いに後悔するでしょうね。まだシェイマスを見つけてすらいないのに、連中はまるでここがやつらの所有物であるかのように大手を振って歩き回ってる。隊長は気にしないかも知れないけど、私は気にするの、大いにね」

「どうすれば良い、アヴェリン?」俺は尋ねた。

「その少年を先に見つけるのよ」

「もっと人手が要るな」

アヴェリンは彼女の机の電話を指した。
「あなたの知り合いを出来る限り当たってちょうだい。ここの連中の無能ぶりを見れば誰も信用出来ないわ。あなた達二人を、名前を聞きもせずにここに通したんですものね」


カーヴァーは捕まらなかった。ギャムレンが言うには、彼はまだ戻ってきていなかった。あっちもこっちも行方不明の息子だらけだ。メリルが、アンダースとヴァリックを下町から乗せてきてくれて、俺達は皆警察署の前で落ち合った。

「それで君達は皆、ただで働いているのか?」俺が彼をアンダースに紹介したとき、フェンリスが尋ねた。

「働くも働かないも無いさ、トリップに着いていきゃあ面白いことになる」とヴァリックが言った。

「だけどあなたもここにいるじゃない?」メリルが指摘した。フェンリスはしかめっ面をした。

「さあ、もういいだろう。アヴェリンが車を持ってくるから、俺達は少年を探しに行く。君達はウィンターズを見張っていてくれ、ここだ。警察が入手した最新のアジトの情報だ」

「いいね。だがもし連中が、既に何か馬鹿な事をしでかしていたとしたら?」とヴァリックがその住所のカードを受け取りながら言った。

「そうしたら俺達がど真ん中に乗り込んでやつらを撃ち払うさ」俺はニヤッと笑って言った。

「だけどあなた銃を持ってないでしょ、トリップ」とメリル。

俺は間に合わせで何とかすると、彼女に言った。

メリルと他の二人は下町のウィンターズのアジトに向かい、その間にアヴェリンと俺、フェンリスでクナリが上町に作りかけている大使館予定地へと向かった。

「警察の車に乗ったのは初めてだ、いやっほーい」と俺は言った。

「トリップ、ダッシュボードから足を降ろしなさい。あなた納屋育ちなの?」 1アヴェリンは随分上手に運転したが、俺に言わせれば慎重すぎた。

「実際、その通り。あるいは似たようなもんだな」

クナリ大使館は静まりかえっていた。制服を着た二人の男が玄関先に立っていた。

アヴェリンは大きく息を吸い彼らに近寄った。連中は彼女を無視して、俺とフェンリスを見ると話しかけた。
「お前達は入ってもよろしい」

アヴェリンはむかっ腹を立てたようだったが、ここで喧嘩をするような馬鹿じゃあ無かった。

クナリ大使館の中がどんな風か、俺には想像も付かなかった。ここは大きな、静かな屋敷で、夜遅くにも関わらずクナリが大勢事務仕事をして、彼ら同士で話をしていた。連中が俺達の事を完璧に無視しているのも不気味だった。制服を着た男の一人が俺達を後ろの部屋へと案内した。まるで王座のようなでかい椅子以外、空っぽの部屋だった。

ここに居るクナリは皆、俺達と同じような服装、つまりスーツにネクタイを締めていた。もっとも連中の角に帽子を引っかけるまではやらないようだったが。だがその男は違った。多分この服は伝統衣装というやつなんだろうと、俺は想像するしか無かった。革製のズボンの上に革製の前垂れのような物、裸の胸。何だか俺の方が相応しく無い服装のような気がしてきたぞ。彼の眼は曰くありげに輝き、重々しい権威を身にまとっていた。

「アリショクだ」とフェンリスが耳元で囁き、彼の吐息が俺の頬をかすめた。
「用心しろ」

アヴェリンは敬礼し、俺は帽子を脱いだ。フェンリスは頭を傾けてクナリの言葉で何か言った。

「お前達は、下町で干渉したな」アリショクは訛りの無い共通語で言った。

「善意からね。俺達はここにはシェイマス・ドゥマーを探しに来たが、彼を探しているのは俺達だけじゃない。他の者達はキュンの信奉者のエルフをほとんど殺し掛けた、連中は他の者を殺すのもためらわないだろう。君の部下が、シェイマスはここのアシャードと一緒に居ると言っていた。彼の身も危ない」

俺の言葉の何が彼の注意を引いたのか、俺には判らなかった。アリショクは立ち上がって俺達の方に歩いてきた。彼と視線が合ったが、一体何を考えているのかは読めなかった。

「シェイマスはここには居ない」彼はようやく言った。
「彼は今朝、アシャードと共に出かけた」

「彼らはどこへ行った?」

「キュンのために答えを求めるのがアシャードの役目。彼らは図書館へ行った」

俺は瞬きをした。図書館?
「上町の、図書館へ?」それが連中の情報を集めるやり方か?
「ありがとう、アリショク」俺は素早く言った。フェンリスは正しかった。目の前に行って尋ねろ。
「君のアシャードも無事連れ戻すようにしよう」

アヴェリンは両眉を上げて俺をちらりと見た。俺は肩を竦めた。しよう、って言っただけだ。

「好きなようにするが良い」アリショクは言って身を翻した。
「お前達にはその方法しかないのだからな」

俺達は大急ぎでクナリ大使館を出て、そしてすぐに俺はアヴェリンの運転について意見を改めることになった。彼女の運転は上手い、だが今度は慎重のシの字も無く、スピードメーターの針は赤の領域にずっと貼り付いていた。彼女はためらうこと無くクラクションを鳴り響かせ――あるいは窓から身を乗り出して吠えたて――行く先から他の連中を追い払った。

「一体何だってそんなに急いでるんだ?」と俺は尋ねた。

「上町の図書館にクナリが一日中居る。注意を引かないはずは無いわ。ウィンターズがすぐに見つけるでしょう、もしまだ見つけていなかったとしても。連中が街中に手下をばらまいていると考えるべきね、下町だけじゃなくて」

「俺達は連中と下町で一日中追いかけっこをしている間、アシャードと坊主がずっとここに居たってのか。信じられない」

「もしウィンターズの連中に私達と協力するつもりがあったら」アヴェリンが食いしばった歯の間から吐き出した。
「彼らは昼前には見つかっていたでしょうにね、それから静かに話し合いをして、何も起こらずに済んだはず。だけどやつらは物事を難しくしなきゃ気が済まないのよ」

車が角を曲がり、タイヤが悲鳴を上げて俺は帽子を引っ掴んだ。

俺は聞き覚えのあるホーンがしつこく鳴り響く音を聞き――アヴェリンが身を乗り出している、その上から――他の車の中にメリルと他の二人が、俺達のすぐ後ろに居るのが見えた。

「ヴァリックだ、速度を落として」

アヴェリンは少し速度を落とし、メリルが俺達の車のすぐ側に寄せた。

「大勢が出入りしてね」とヴァリックが大声で叫んだ。
「それから車が三台、いっぺんに出て来た。ビアンカで一台足止めしたぜ」彼の顔はいかにも嬉しそうだった。

「連中は図書館へ向かっている」メリルが俺達のすぐ後ろに付き、俺は叫び返した。

図書館は上町の教会から数ブロックのところにあった。俺達が到着した時には人々が遠巻きにしていて、正面には車が二台止まっていた。遅かったか。俺達は皆車を降り、アヴェリンは俺達を見回していった。

「あなた方を警察の代理と見なします」と彼女は言った。
「他人を逮捕してもよろしい、だけど身体検査はしないように。それと、誰も殺しては駄目」
彼女は自分の銃を確認した。

「私達もバッヂを貰える?」メリルは興奮した様子で言った。アヴェリンは首を横に振った。

俺はニヤリと笑った。

アヴェリンに従って俺達が図書館に入った時には、善良な民間人のフリをしたもっと奇妙な連中はどこにも見当たらなかった。机の後ろで震えていた図書館の下働きのエルフが、アヴェリンの制服を見てホールの向こうを指さした。
「やつらはあっちに行った!銃を持ってた」

アヴェリンは頷いた。
「他に民間人は何人いるの?」と彼女はエルフに尋ねた。

「もう閉館時間だったけど、大抵数人は俺達に追い出されるまで居残ってるよ」

「俺達はクナリを探して――」銃声が俺の問いを遮った。

俺達は一斉に走り出した。無数の本が収蔵された円形の巨大なホールには、机で仕切られた12フィートの高さの本棚が延々と並んでいた。

「警察よ!」アヴェリンが叫び、その声が部屋中に反響した。

銃を手に持った男が本棚の間から走り出てきた。ビアンカの銃弾が彼の足を貫いて男は転げ、武器を落とした。

「武器を降ろしな、さもないとガキの命は無いよ!」女の怒鳴り声。

「まずいな、シェイマスが人質だ」俺は呟いた。

「私と来て、トリップ」とアヴェリンが静かに指示した。
「残りの人達は散開」

俺は頷いた。俺は両手を挙げて本棚の間から進み出た。他の連中は急いで散らばった。

アヴェリンの机の前で見かけた女が部屋の後ろに、ランプを置いた机に囲まれて立っていた。その後ろには銃を構えた何人もの男達が控え、何気なく俺達の方を狙っていた。クナリが机の本の上に倒れ伏し、頭に開いた穴から血が流れ出ていた。その隣に座った若い、上等な服装の男が彼を震えながら見つめ、大きく開いた眼には涙が盛り上がっていた。彼の頭に突きつけられた女の銃にも気が付いていないようだった。

「おや、あの新米警官じゃないか」女が耳障りな声で言った。
「そうだと思ったよ。他人の商売に鼻を突っ込むなってのが、判らないようだね?」

「殺人は私の商売よ」アヴェリンが平静な声で答えた。
「襲撃も、公共の場での発砲も、誘拐も――」

「やかましい!」彼女が銃をアヴェリンの方に向け、俺は身を強ばらせた。

「このガキを父親に返せば、やつはウィンターズにでかい借りが出来る。とびっきりのね。新米警官一人がうっかり死んだって言い訳位付くだろうさ」

「シェイマスはどう言うかな?」と俺は尋ねた。女の冷たい目線も、その銃身も怖くは無かった。

「彼は僕の友達だった」シェイマスが震える声で言った。
「お前が殺したんだ」

「角付きが一匹死んだからなんだい?もしお前の父親が吐かなくても、あたしが新聞社にたれ込んでやるさ、市長の息子はクナリの愛人だってね。次の選挙が楽しみだよ」

「お前となんか、僕はどこにも行かないぞ」少年は彼女を怯えた表情で見上げた。

彼女は苛立たしげな顔付きで、銃を持った手で少年の顔を殴りつけた。その時アヴェリンが静かに銃を上げて発砲し、彼女がぎゃっという悲鳴を上げた。撃ち抜かれた肩から血が噴き出し、彼女はよろめいて後退りした。アヴェリンと俺がその場に伏せたと同時に、ヴァリックの銃弾が重々しい机の上をかすめ飛び木片を散らした。威嚇射撃だ。他のウィンターズのならず者達も本棚の後ろに隠れた。

俺は本棚のどこかすぐ近くで、悲鳴とひび割れた雷の様な音、メリルの「やった!捕まえた!」と言う声を聞いた。

ウィンターズの女は左手で銃の狙いを付けようとしたが、まるで復讐の天使のようにアヴェリンがその前に立ちふさがった。アヴェリンの右フックが、まさしくメイカーの裁きの手の如く女を机の向こうへ吹き飛ばした。銃は女の手からすっ飛び、本棚にガチャンとぶつかった。

俺はシェイマスを抱きかかえると机の下に潜り込ませた。
「頭を低くしているんだ」と俺は小声で言い、彼は言われたとおりに椅子を滑らせて机の下に屈み込んだ。必要以上に人目に触れさせるのはまずい。

俺はビアンカの威嚇射撃から立ち直ったウィンターズの前に飛び出し、アヴェリンのすぐ左隣に立った。やつはパンチを放ちアヴェリンの顎に確かに命中した。彼女の頭が後ろに仰け反ったかと思うと、彼女はにっこりと笑った。

「私の番ね」彼女のストレートが綺麗に決まり、男の鼻っ柱を砕いた。

「頼りになるぜ」俺が愛想良く言うと、アヴェリンは鼻で笑った。

「大勢やって来たぜ!」ヴァリックが本棚の後ろから転がり出て、ビアンカが彼の手の中で白煙を上げた。

「全く、警察はどこに居るの?」アヴェリンが唸り声を上げた。

「多分ウィンターズの連中が表で入るなって言ってるんだろうよ」

「警察官たる者、ウィンターズの連中の言うなりになってはいけないはずよ。あるいは市長の。私達が従うのは法律」俺はアヴェリンの首根っこの筋肉がぴくぴくと動くのを見たような気がした。

「後で市庁舎に殴り込みに行くか」

「やつらはもう行った?」とシェイマスが頭を覗かせた。

「この野郎、出て来るな!引っ込んでろ!」俺は慌てて怒鳴った。

本棚の後ろから銃声が鳴り響き、俺達は反射的に屈み込んだ。俺が見守る間にも銃弾が目の前で速度を落とし、やがて床の上にぽとりと落ちた。俺は驚き、思わず手を上げて俺達を取り囲んでいる白煙のような輝きに触れた。シールドだ。俺は横目で向こう側の本棚の間に居るアンダースを見やった。彼は眼鏡の位置を整えながら、俺達に向けて気取った笑顔を見せた。

「良い腕だ、ブロンディ」ヴァリックがニヤッと笑った。
「俺―は―無敵だ!」彼はビアンカで半円を描くように掃射すると、銃身を折って一握りの薬莢をぼろぼろのカーペットに落とした。

「ヴァリック!」慌てた声でアンダースが呼んだ。
「君はシールドしてないって!」


残ったウィンターズの連中を俺達が片付けた後で、メリルのパラソルがどこに行ったか探し出すのに思ったより時間が掛かった。警官が来るより先に救急車が到着したが、すぐに部屋の中は制服で一杯になった。アヴェリンはウィンターズの女を彼女の足下から引き立てて、大声でアシャードの殺人容疑で逮捕すると言い、多少なりとも鬱憤を晴らしたようだった。

一組の制服警官がその女を引っ張っていき、アヴェリンが声を潜めていった。
「この告発が有効かどうかは判らないわ。クナリは市民では無いし、陪審員にも嫌われている。上手な弁護士の手に掛かれば正当防衛を訴えて有罪に疑義ありと言い出されるかも知れない、それに市長が息子を証言台に立たせるかどうか、怪しいものね」
彼女は歯を見せて笑った。
「だけどとにかくあの女は傷の手当てをして貰ったら牢屋に放り込まれる、そのまま朽ち果ててくれればいいんだけど」

アンダースはそこら中の警官にひどく神経質になっている様だった。体制による暴力に関する彼の長演説からすると、そうなってもおかしくない理由があるように俺には思えた。
シェイマスは市長秘書と警官がよってたかって彼を連れて行く前に、俺の手を堅く握りしめ、きっと報酬があると約束した。

「そして一人の死者も無し」アヴェリンが俺達に誇らしげに告げた。

メリルは考え込むように指を一本唇の横に当てて、大きな目でフェンリスの方を眺めやった。
「ひょっとすると彼、あまり上手な殺し屋じゃないのかも」

「黙れ、魔女が」彼は唸った。

「その台詞は女性差別よ!」

「うるさい!」アヴェリンが二人の口喧嘩を止めた。少なくとも、とりあえずは。
「あなた達の手助けに対して、報奨金を出すことが出来るわ。大した額では無いけど」

その言葉は俺は大いに気に入った。
「今夜はハングド・マンで飲むぞ、街のおごりだ!」

ヴァリックは歓声を上げ、メリルがしーっと言った。
「ここは図書館よ」と彼女が説明した。
「静かにしないといけないって。ほら、注意書きに書いてあるわ」

「君も」俺はフェンリスを指さした。
「一緒に来るんだ」

「どうやら俺に選択の余地は無さそうだ」と彼は言った。だが俺は確かに、彼が微かに笑うのを見たと思った。

Notes:

  1. “raise in a barn”:無教養な、行儀の悪い、という意味がある。
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8.鋳物労働組合、ストライキを警告 への2件のフィードバック

  1. EMANON のコメント:

    アwヴェwリwンw さすが兄貴頼りになるゥw

    そして相変わらずメリルのボケが可愛いってば。

    >“raise in a barn”:無教養な、行儀の悪い、という意味がある。
    日本で言う「お里が知れる」っつーやつですなwww

  2. Laffy のコメント:

    いやもう完璧に兄貴ですw「姉御」じゃないもんな、もはや。

    あれ。今気が付いたけど、ドニックが出て来た様な気がしない。
    ……ま、いいか(笑)

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