10.号外!図書館で発砲事件

カーヴァーは慣れないオールで悪戦苦闘しながら、ダークタウンの倉庫内からゆっくりとカークウォール湾へと漕ぎ出した。メリルはマジスターのふかふかの毛皮の帽子が大いに気に入った様子で、船の舳先にちょこんと腰を掛け、あたりを見渡す彼女は大層可愛らしかった。マジスターは小舟の底にうつ伏せでへたり込み、フェンリスの片足に頭の後ろを押さえつけられて、ただ胸を抱え込んで何か呻いていた。時折フェンリスが彼の頭を持ち上げては、船がどちらの方角かを聞き出していた。

Ушанкаg俺達の小舟に波が打ち寄せ、すぐ側を遊覧船が通り抜けていった。船の明かりが水面にキラキラと踊り、ジャズの音が湾内を漂って来た。それから大きな旅客船、俺達が船底の三等客室でフェラルデンから乗ってきたような船がゆっくりと港を出港していき、他にも無数の小さな貨物船が夜の湾内で静かに停泊していた。

俺は精々居心地良く舷側にもたれ掛かると、フェンリスの横に座って煙草に火を付けた。ここからだと、港から山沿いに掛けての街全体が見渡せた。鋳物工場が赤い炎と共に煙を吐き出し、上町にはこの夜遅くでも明々と電灯が点っていた。俺はニヤリと笑っていった。
「やあ、いい眺めじゃないか?」
フェンリスとカーヴァーが俺の視線の方を見た。カーヴァーは口を聞く余裕が無いようだった。

「君はそんなにこの街が気に入っているのか?」とフェンリスが訪ねた。

「そうとも。君が逃げ込む先に選んだのは世界でも最高の街だ。この街の空気は君を自由にする、賭けても良いぜ」
俺は湾の向こう側に見える、威圧的なギャロウズの暗い影は無視した。大したことじゃあない。この街に惚れ込むのは、いい女に惚れるようなもんだ。彼女のちょっとした欠点はその眼の輝きをより一層鮮やかに、上機嫌な時の顔をより一層魅力的に見せ、俺の胸を感動で一杯にする。

「君は本当に変わったメイジだな」とフェンリスが言った。彼はギャロウズを見つめていた。

俺はため息をついた。
「ほんのちょっとでもロマンチックな気分になれないか、フェンリス?」

「俺達はテヴィンターのマジスターと、デーリッシュの魔女と君の弟と一緒に舟に乗っている。これが悪い冗談ではなく、君とロマンチックな気分になる機会のように思えるのか?」

悪い冗談だろうがなんだろうが、俺は声を立てて笑った。フェンリスの言葉に純粋に驚いたというのも多少はあった。フェンリスは彼自身でも驚いたようで、マジスターの頭の後ろを蹴飛ばした。多分、むかっ腹を晴らすためだろう。

マジスターはやがて港のちょっと離れたところに泊まっている小さな船を指さした。ごく普通の漁船のように俺には見えた。それが重要なところだ。

「こいつは海へ放り込んでやれ」とフェンリスがマジスターを睨み付けながら提案した。

「いや。あの船には行方不明になった少年が乗っている、この野郎と引き替えに彼を家族の元に返したい」と俺は言った。

「ふん、仕方がないか」フェンリスは渋々ながら同意した。

俺は口に両手を当てると、その船に向けて呼ばわった。いくつかの明かりが中で動き、それから誰かがランタンを持って船上に出て来るのが見えた。

「誰だ?」甲板にのっそりと出て来た男が聞いた。

「フェンリエルという名前の少年を捜している。そこに居ることは判っているぞ」と俺は叫んだ。

「そんなやつは聞いたこともねえな。失せろ」

俺はフェンリスの方を見やり、彼はマジスターの髪の毛を一掴みして頭を舷側から持ち上げた。「待った!止めろ!」俺達の囚人は震えながら叫んだ。

漁船の上の男はランタンを高く掲げ、更にいくつかの人影が動くのが見えた。

「マジスターを返して欲しければ、その少年を渡せ。そうだな?」俺は歯を剥き出してマジスターに笑って見せた。

「そうだ!こ、これは命令だ!」マジスターは震えながら言った。

「上出来だ」

更に船の中で動きがあり、やがて青ざめた、まだ少年とも思える男が甲板に引きずり出された。

「フェンリエルか?」と俺は声を掛けた。
「君の母さんから頼まれてね。大層心配している。君を家に連れ戻しに来た」

「家に?」彼は少しばかりふらついているようだった。

「君はフェンリエルだ、そうだな?俺はてっきりエルフかと思っていたんだが」

「いや、彼の父親がヒューマンでね」とカーヴァーが説明した。

カーヴァーが舟を漁船の近くにこぎ寄せ、気詰まりな交渉の後でフェンリエルが縄ばしごを先に下りることになった。これはちょっとした用心だった。何しろ俺達は誰も、舟の上での身ごなしが得意とは言えなかったから。

フェンリエルがメリルの横に屈み込む間に、マジスターがよろよろと縄ばしごを登った。俺はやつの足首を掴んだ。
「ゆっくり行け」と俺は言った。

俺は片手を伸ばして魔法を呼び起こすと、手の上に小さな輝く球を作った。
「もしお前達がこっちの船の邪魔をするなら、俺がそっちの船をひっくり返すぞ、判ったな?」
俺は出来るだけ恐ろしげに見えるようにしながらやつを船に戻らせた。ともかく、定員過剰の手こぎ船の、舳先に腰を降ろした男が出来る限り、恐ろしげに。立つと足元が危うかった。周囲が暗かったのも幸いしただろう。

俺は本当にやつらが邪魔をしてこないことを願った。
驚くべきことに、連中は大人しく俺達を見送った。

「テヴィンターの連中は魔法を尊重する」そう言うフェンリスの口調は、明らかに彼はそうではないことを示していた。
「その少年の対価が何であれ、君と争い事を起こすだけの価値は無かったようだ。ここまで離れれば安全だろう。連中の船を転覆させないのか?」

「さっきのはハッタリだよ、フェンリス。俺はメイジだ、奇跡を起こす男じゃあない」

「本当に僕を家に連れて帰るのか?」その少年、フェンリエルが初めて口を聞いた。

「他にどこに連れて行くというんだ?」と俺は尋ねた。

彼はすぐに答えようとせず、両手を握りしめてはあたりの暗い海を見渡し、まるで今にも飛び込もうとするようだった。
「家には帰りたくない」と彼はようやく言った。
「だって、逃げてきたんだから」

「まあ、そんなところだろうと思ったよ。だが君はまさかテヴィンターに逃げようとしていた訳じゃないだろう」俺は答えた。

「何故駄目なんだ?」とフェンリエルがふくれっ面をして言った。

「やつらが君を、心からの善意で誘拐したとでも思うのか」フェンリスが彼に向けて言った。

「母さんは僕をサークルに送ろうとしていたんだ。僕の悪夢が酷すぎるから――行きたくない。お願いだよ、行かせないと言って」彼は振り向くと、その大きな悲しげな眼で俺の方を見つめた。

うう。勘弁してくれ。

俺はフェンリスが話し出そうと息を吸うのを感じ、彼の胸先を肘で突っついた。彼の言うことは大体見当が付いたが、それで何か助けになるとも思えなかった。もしフェンリスが彼の意見を述べる時には、俺は脅えびくついた、しかもまともな訓練を受けていないガキのメイジと同じ小舟に乗っていたくは無かった。

「どうしてサークルに行きたくないんだ?」俺は用心しながら尋ねた。無論幾つも理由は考えついたが、だがギャロウズでさえ長年暮らしているメイジもいるからには、そこの生活が向いている連中が居ることも、また間違い無いだろう。

「もし僕の悪夢が良くならなかったら?連中はきっと僕を『平穏化』する、そうだろう?」

俺はこの少年に嘘はつけなかった。
「ああ、そうするだろうな」

「もし君が危険にさらされているのなら――」フェンリスが口を挟んだ。

「止めとけ、フェンリス」俺は慌てて遮った。

「――君の母親はどうなのだ?」彼はとにかく続けた。

フェンリエルは、落ち込んだ惨めな様子でうつむいた。

「デーリッシュはどうかしら?」とメリルが声を上げた。

「デーリッシュがどうしたって?」俺はそう尋ねた。

「あなたのお母さんはエルフなんでしょう?」メリルが同情に溢れる様子で尋ねた。
「デーリッシュは、メイジをトランクィルにしたりしないわ、それにあなたを悪夢から助けて上げられるかも知れない」

「本当?」彼は微かな希望にすがりつくように、俺達の顔を順番に眺め回した。

その時ようやく、俺達の舟は桟橋の一つに着いて、カーヴァーはオールから手を離すと大きく安堵のため息をついた。明日には激しい筋肉痛になっているのは間違い無さそうだ。

「さて、もしデーリッシュの氏族が彼を受け入れ、それに彼も行きたいというなら、俺には異論はないね」と俺は言った。
「だがまず最初に、君は家に戻って母さんに会う、判ったな?彼女が俺達を雇って君を探させるために25シルバーをかき集めたお陰で、俺達は君を助け出すことが出来た。少なくとも直接会って、彼女にありがとうと言うんだ」

フェンリスは俺達が舟から下りる間、唇を固く結んで何も言わなかった。メリルは楽しそうにフェンリエルの手を握り、少年の顔はトマトのように真っ赤になった。メリルは彼を間違い無くエイリアネージの母親の家に連れて行くと約束した。

「やれやれ、一仕事をしたと言っても良いだろうな」カーヴァーが歯を食いしばりながら言うと、出来る限り腕を動かさないように桟橋によじ登った。
「ところで兄貴達は、一体今日は何をしてたんだ?」

「ああ、俺達は市長の息子をクナリから――まあ、実際のところはギャングからだな、助け出したのさ。彼はクナリと一緒に居たけどな。明日の新聞を見ろよ。きっと記事になってる」

俺はカーヴァーが息を飲み、ぽかんと俺を見つめるのを見てニヤッと笑った。突然彼は口をぴしゃりと閉じるとしかめっ面をした。
「だろうな。きっと、そんな事だと思ったよ」彼は踵を返すと静かに歩き去った。

「君は本当にあの少年をただデーリッシュの元へ行かせるつもりなのか?」

俺はフェンリスがそのことについて反論してくるだろうと、半ば予想していた。その話をどこまで聞くかは俺が決めなくちゃいけない、そのことが俺を苛つかせていた。
彼はとことん押してくるだろうし、俺は出来る限り理性ある制御されたメイジとして、彼の非難を俺個人に当てた物だと受け取らず、辛抱強く聞かなきゃならん。だがアポステイト全体の話は、結局は俺個人に掛かってくる話だった。

「ああ。どうして駄目なのか俺には判らないな。俺は他人を殺してまでサークルに入るまいとした、なのに他のメイジをそこへ追いやったら俺は最悪の偽善者だろうよ、違うか?」

「彼は彼自身に、そして周囲の全ての人々にとって危険な存在だぞ」とフェンリスが噛みついた。

俺は彼に向き直った。もううんざりだ。少しくらい違う事が言えないのか?
「君もだ、フェンリス。男の胸の中に手を突き刺して、怯みもしない君を俺は見た。君は何とも思わず他人を殺せる訓練を受けている、その君が平然とそこに立っている時に、俺は無辜の少年を、犯しても居ない悪事のために閉じ込めるべきだってのか?」

「それでもし彼が悪夢から目覚めて、家に火を付けていたとしたらどうなる?あるいは、彼の母親を殺していたら?」

「君は今まで何人の人を殺した、フェンリス?」俺は冷ややかに尋ねた。
「フェンリエルは誰一人、傷つけちゃ居ない、君と違ってな。俺は犯しても居ない罪科で彼に刑罰を宣告するつもりは無い。君は自分が世界最悪の偽善者だってことは判ってるんだろうな?」

「俺が人を殺さなくてはならなかったのはマジスター共のせいだ、やつらが魔法で、俺を連中の言いなりに従わせた。俺に選択権があったとでも思うのか?俺が望んでやったことだとでも?やつらのせいだ。これもまた、魔法のせいだ」

俺達は拳を握りしめ、互いの周りを回りながら歯を剥き出してにらみ合っていた。

「フェンリエルがメイジになることを選んだとでも思うのか!」

「ただ一体の悪魔が彼に足がかりを得るだけで――」

「悪魔だ?フェンリス、俺は君ほど数多くの悪魔の虜になっていた男は見たことが無いぞ」

彼の眼は驚きに大きく見開かれたかと思うと、急激に怒りによって細く狭まった。痛いところを突いたようだ。
「やる気か?本当に?自分には魔法があるから勝てるとでも思うなら大間違いだ」

「おう、やってやるとも。それと言っとくがな、魔法を使って君を満足させてやるつもりはさらさら無いぜ。俺は何かを証明するために光る必要は無い」

彼は俺に向かって突進し、俺は素早く一歩横に飛び退って彼を避けた。俺は彼から一瞬眼を逸らせて辺りを見た。
「だがここじゃまずい」と俺は言った。

夜の波止場はおよそ賑やかな場所じゃあ無かったが、それでも警官が見回りに来たし、邪魔が入るのはごめんだった。フェンリスにもそのことは判ったようだった。


俺達が下町に戻ったとき、ヴァリックの店にはまだ灯りが点っていた。

俺はもう怒ってさえ居なかった。少なくとも、フェンリエルの件に関しては。彼はただのきっかけに過ぎなかった。俺はフェンリスに腹を立てていた。何故って、彼がどれ程つむじ曲がりの、不機嫌な、くそったれ野郎でも、俺の頭から出ていこうとしなかったからだ。
どれ程彼がメイジへの憎しみを露わにしても、俺はそれをただ受け入れて、彼に魔法を、俺を、恐れる必要は無いと説得しようとしていた。もう沢山だ、説得なんざクソ喰らえ。今夜こそあいつを俺の頭から叩きだしてやる、それともあいつが、この……狂気を俺から叩き出すか。

ヴァリックの店のドアを押し開けるとベルがチリンと鳴った。フェンリスも俺に続いた。ヴァリックは俺達が戻るのを起きて待ってくれていた、もっとも彼はそうは言わなかったが。カーヴァーもそこにいて、何が起きたかを彼に話していたようだった。

「ようヴァリック、地下室を借りてもいいか」と俺は言った。

「もちろん、だがどうするんだ、中でへたばるのか?」彼は俺達を不思議そうに見た。

「そうなるかもな」

ヴァリックとカーヴァーが見つめる中、フェンリスと俺は地下室のスペースを空けた。

「アンダースがまだ起きてるか見てこようか?」とヴァリックが尋ねた。彼は俺達が何をしようとしているのか感づいたようで、止めこそしなかったがおよそ歓迎するようではなかった。

「いや」俺とフェンリスは同時に答えた。

「さんざんに負かされるぞ、トリップ」とカーヴァーが言った。

俺は上着とシャツを脱いで上半身裸になり、靴とベルトを外しながら、やつに黙れと言った。部屋の向こう側で、フェンリスも同じことをしていて、俺は彼をじっと見つめていた。その、やつの気合いを計っていたってことだ。彼の黄金色の肌に紋様が際立っていた。喉元から腕へと伝う白銀の線は胸元で分岐し、彼の胸から腹の上を左右対称に覆ってズボンの下へ消えていた。
俺ものろまなデブでは無かったが、彼はまさしく戦いのために鍛え上げられ張りつめた、純粋な筋肉の固まりだった。ひょっとすると、カーヴァーの言うことが正しいかもしれない。ひょっとすると、事をややこしくするよりこの方法でケリを付けようとしたのが、間違いだったかもしれない。
だがもう今更取り消しも出来なかった。

「魔法無しだ」と彼が言うと、肩を回しながら部屋の中央に進み出た。

「リリウムも無し」俺は落ちついて答えた。

「紳士協定だ。誰も死ぬこたあない」とヴァリックが断固とした声で言った。

俺は頷いた。急所攻撃は無しだ。俺の得意技が幾つも封じられたが、それはフェンリスも同じだろう。俺はつま先立ちになって身体を軽く上下させ、アドレナリンが血管を駆け巡った。

仕掛けたのはフェンリスの方が早かった。俺達は互いに攻撃を避け、逃げながらしばらく相手のディフェンスを確かめた。だが彼が死角から俺の耳に一発喰らわしたときには、俺はまるで煉瓦で叩かれた様な気がした。俺の頭は銅鑼のようにぐわんぐわんと鳴り響き、よろめいて後ろに下がると、彼が更に攻撃を仕掛ける前にどうにかして体勢を立て直した。

殴られるな。俺は自分に言い聞かせた。

数瞬後に俺にお返しの番が回ってきた。彼は好機に付け込もうと手を伸ばしすぎて姿勢を崩し、その隙に俺は拳を彼のみぞおちに叩き込んで、彼の肺からヒュッと空気が逃げる音を聞いた。

「見物チケットを売った方が良かったかな」本箱の上に座ったカーヴァーが、ぼんやりと言った。

俺達のどちらも、お互い一撃でノックダウン出来ないことが判って、持久戦でどうにか相手を弱らせようと、互いの腹や腕を数回殴りつけた。俺の指関節はずきずきと痛み、滴り落ちる汗が眼に入った。どれだけ強烈な一発を食らわせても、フェンリスは退こうとはしなかった。そして俺は彼の攻撃を避ける体力を失いつつあった。

俺はフェンリスが、ひときわ強烈な一振りを浴びせようと身構えるのを見て、防ごうと俺の左腕を上げた。

一瞬、俺は絶対骨が折れたと思った。俺は歯を剥き出し、左脇腹に彼が入れたジャブで痛みに呼吸が止まるのを感じながら、そいつを無視して彼の顎に一発叩き込んだ。俺の向こう見ずな攻撃は予想も付かなかったのか、彼はよろめいて後ずさった。

今だ。俺はこのチャンスを逃すまいと彼に飛びかかり――

「アンドラステ様の名に掛けて、一体何をしているの!」

フェンリスはバランスを崩して倒れ込み、俺は殴りかけた手で彼の上腕部を掴んだ。俺達は一瞬相手の顔を覗き込んで、互いにバツの悪い顔付になった。彼の肌のリリウムが俺と反応して、指の下でほんの微かに震えていることに俺はぼんやりと気が付いた。

母さんが眼を怒らせて俺達を睨み付け、カーヴァーとヴァリックにがっかりしたような表情を見せた。カーヴァーは頭を下げてうつむき、ヴァリックはといえばただ頭を静かに振っていた。

フェンリスと俺は喘ぎながらお互いを見やり、ダメージを見計らっていた。彼は下唇が切れて血が流れていたが、俺の目にでっかい黒アザが出来るのは間違い無く、そして二人とも身体の至る所にアザや切り傷があった。引き分けと言っていいだろう、と俺は思った。

俺は母さんの方に振り向いたが、眼を合わせるのはごめんだった。

「フェンリス、俺の母親のリアンドラだ。母さん、フェンリスを紹介するよ。あー、その、友達だ」

フェンリスの口の隅が微笑むように曲がり、彼は驚くほど優雅に、恭しく頭を下げた。

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10.号外!図書館で発砲事件 への2件のフィードバック

  1. EMANON のコメント:

    そうかやはり最強は母なのだなw
    きっとフェンリスもリアンドラママに
    おすわりと言われれば言うことを聞くと
    思われるw

    リアンドラ「フェンリス!伏せ!アンダース!お手!」
    ホーク「母さん…」

  2. Laffy のコメント:

    お座りでも伏せでも言われるがままにw
    この後夕飯攻撃で更にめろめろw

    さて次がジェサン……長いなあこりゃ。大変だ。

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