第49章 素敵な熱い風呂

第49章 素敵な熱い風呂


(原作者による注意書き)
…さて、ここからの話はMature(17歳以上)指定にした方が良いようです。はい、この先にちょっとばかりエロい場面が登場します。出来るだけそういうことが起きる前に注意書きを付けるようにして、二人の男性同士が健康的な肉体関係を持つ(あるいはそういうことを想像する)場面は読みたくないという人は、そこを飛ばせるようにします。この章においては、最初の節はそのまま読んで頂いて大丈夫ですが、その後の水平線から後は飛ばしてください。

(訳者注)初期状態では該当部分は隠してあります。「▽折り畳み部を表示」をクリックすると見えるようになります。


アンダースはため息をつくと机に頬杖を付き、もう一方の手で机の上に広げた紙の上にせっせとスケッチを描いていた。猫の絵が紙の上に浮かび上がり、彼は微かな笑みを唇に浮かべた。

アヴェリンからの知らせを受け取ってから既に一週間以上経っていたが、その間に彼とセバスチャンの関係は……どういう訳か、緊張したものに変わっていた。理由がすっかり判っている訳では無かったが、彼の側としては、セバスチャンへの興味が ‐ いや、率直に言えば彼への欲望が ‐ 高まりつつあるのが小さからぬ影響を与えていた。熱っぽい夢の中に始終姿を現す誰かの側で寛ぐのはなかなか難しかった、とりわけ、ほんの少し顔を赤らめただけでも彼の色白の肌がはっきり見せてしまう場合には。

まったく忌々しい、何だって彼はもっと適当な、少なくとも現実的に見て関係を持つことが許される相手に惚れることが出来ないのか。例えば彼の護衛、彼らは皆そこそこ格好いい男性だった。例えば城の召使い、食事以外でセバスチャンの部屋を訪れる時に、そこを掃除しているのを時々見かける愛らしい娘のような。ドゥーガルの方がまだセバスチャンより注意を向けるのに相応しい相手だったろう。
そもそも彼の見た所では、セバスチャンはスタークヘイブンの統治者としてストレートだった。フェンリスでさえ、彼に比べればまだ判る相手だった、もっともあのエルフにそんな興味を示した時に帰ってくる反応は、青白く光る拳と苦痛に満ちた死であるのは間違いなさそうだったが。

彼はそれでも、フェンリスとセバスチャンが何らかの形で関係を持っているのだろうかと思っていた。セバスチャンはほとんどエルフの時間を占有しているように見えた ‐ 彼と二人でメイジの自由に関する議論か、読み方の練習をしていない時は、アンダースが見る限りエルフは馬かセバスチャンのどちらかといつも一緒に居るようだった。大公自身も乗馬が大層好きなせいもあって、時には両方と一緒にいた。

セバスチャンと共に過ごす、彼には無い口実がフェンリスにあるのがとても羨ましく、そのことが彼を悩ませていた。もし仮に彼が突然馬に興味を持ったフリをしても、フェンリスのようにセバスチャンと二人きりで遠乗りに出かけられるかは怪しかった。しかしまあ、二人きりというわけではないか、と彼は自ら訂正して不意にこみ上げる笑いに唇を歪めた。あの二人には、少なくとも半ダースの衛兵が常につきまとっているのは間違いない。親密な一時を過ごすための同行者としては、あまりふさわしくなかった。

とにかく、彼にあの二人に対して嫉妬する権利は無かった。ましてやセバスチャンに欲望を抱く権利など。

彼は机の上に置かれた紙を見下ろし、彼が上の空で描いていたのが、青い眼をした大公がまたもや重要な役で登場した昨晩の夢の一場面なのに気付いた。顔を真っ赤にすると彼は慌ててペンを置き、その紙をくしゃくしゃに丸めると椅子から立ち上がった。暖炉に向けて球にした紙を放り投げたが、もちろん彼が予想したように火の中へは飛んで行かず、暖炉の角に当たって跳ね返ると床の上に転がった。
彼は悪態をつくと拾いに行こうとしたが、その前に机の下から銀色の矢が飛び出て、くしゃくしゃの球に飛びかかった。アッシュが球を前肢でこづき回しながら、その後を全速力で追いかけた。その目新しい愉快なおもちゃで遊ぶ猫が部屋中を跳ね回る姿にアンダースは歯を見せて笑い、それから頭を振って階段を下りていった。

夕食を摂って熱い風呂に入ったら、今日は早めに寝よう、彼はそう決めた。


▽折り畳み部を表示

アンダースは良い香りのするオイルを数滴お湯に垂らした ‐ 今では彼もこの香りがバルサムという名だと知っていた ‐ それから注意深く蓋をして陶器の入れ物を横に置くと、浴槽に入って腰を下ろし、熱いお湯に浸かる快さに溜め息を付いた。温まってきた皮膚の古傷がちくちくと痛み、彼は背中を反らし肩を回しながらしかめっ面をした。そこの傷つけられた神経が完全に元通りになることは決して無かった。次第にその感覚も収まり、彼は再びその巨大な大理石で出来た浴槽に背中をもたれ掛けると、浴槽の縁に頭の後ろを乗せた。

彼はしばらくの間ただお湯に浸かって、心地よく心を漂わせるに任せた。彼がそうしたい時にはいつでも、水を運んではボイラーに入れて温めるだけで、この大きな大理石の浴槽と熱いお湯を満喫する贅沢を味わうことが出来た。彼はちょっとばかりズルをして、単に浴槽に水を張って魔法で温めることも出来たが、このコテージには似つかわしくないほど贅沢で素敵な風呂を楽しむためには、ボイラーに大量の水を運び入れ、火を付けると他のことをして ‐ 今日の場合は夕食を食べて、それから雪の降る庭で犬達としばらく遊んだ ‐ 水が温まるのを辛抱強く待ち、それから浴槽にお湯を張って、おもむろにそれを満喫するという過程が重要だった。

とは言っても、お湯が冷めてしまった時に魔法を使って温め直すことには彼は何の異存も無かった。その後、彼は石けんを取って体中をくまなく洗った。最初は髪の毛を洗って、水面の下に顔を漬けてゆすいで泡を洗い流すと、髪を後ろに撫で付けた。顔、首筋、肩に腕、手と簡単に洗っていき、それからぎこちなく身体を折り曲げると、足のつま先から太腿まで、足指の一本一本まで綺麗に洗った。その後浴槽の中で立ち上がると胸と腹、更により敏感な部分も綺麗にして、ようやく石けんと洗い布を横に置き、再び浴槽にもたれ掛かった。お湯はまだ十分温かく、石けんが溶け込んでほんの少しだけミルク色に見えた。

彼は湯の中で揺らめいて見える自分の身体を見おろした。カークウォールからここに来て以降、彼の体調は明らかに良くなっていた。少しばかり体重が増えたのも、痩せこけてやつれた姿から単に健康的な体格になっただけだった。忌々しいグレイ・ウォーデンの代謝のお陰で、彼が実際に太って見えるようになるまでには、とんでもない量の食事を摂らないといけないだろう。彼は湯に浸かった腹を片手で撫で、そこの引き締まった筋肉を感じ取った。夏から秋にかけての庭での力仕事に、活発な犬達と毎日遊び、さらには時折馬に乗って出かけることで、彼はかなり整った体型となっていた。実際の所、多分アマランシンに居た時代からこっちでは、今が一番良い状態だろう。

彼は再び頭を浴槽の縁にもたせかけてため息をついた。いや、アマランシンからこっちのことは、思い出したくなかった。今の良い気分を台無しにしてしまうだろう。彼は眼を閉じると、今度はフェンリスとセバスチャンと共に摂ったあの日の昼食が脳裏に浮かんだ。セバスチャンの方を見る度に顔が赤らむのを感じながら、彼がそれはもう一所懸命、普段通りに振る舞おうと頑張ったのはメイカーもご存じだったろう。彼は食事の間ほとんどずっと皿のほうばかり見ていて、挙げ句にセバスチャンに心配そうな声で大丈夫かと尋ねられることになった。

メイカー、どうして、どうして忌々しくも手の届かない相手に惚れる前に僕を止めてくれないんだ!
どうも彼にとってそれは習性になっているようだった。ようやく二人が一緒になる前に、どれだけ長い間彼がホークの前で身動きが取れずに躊躇していたことか。そしてそれもまた、思い出したくないことの一つだった。ホーク。彼がほんのつかの間愛し、それも結局はカークウォールの教会と共に壊してしまった。

彼は考えを楽しい方へ向けようとした、例えば雪の中ではしゃぐ犬達と遊んだり、暖炉の前の長椅子に寝そべって、城の図書室からこっそり持ち出した本を読み耽り、アッシュが腹の上で伸び伸びと横になりゴロゴロ喉を鳴らしているのとか。アッシュが昼食の間にちょっとだけフェンリスを遊びに誘い込んだのを思い出して、彼の笑みは大きくなった。猫はフェンリスの首のスカーフの房飾りを狙って飛びかかり、エルフは静かに笑みを浮かべながら、猫の手が届くか届かないかの位置でスカーフをひょいひょいと振ってやった。
セバスチャンが猫とエルフを比べた時のフェンリスの驚いた顔、半ば怒りだし、半ば面白がっていた様子を思い出してアンダースはニヤリと笑った。どちらもエメラルド色の眼をしていて、銀色の髪に優雅な身のこなし、そして指先には鋭く尖った凶悪な武器がある、と大公は愉快そうに指摘した。

セバスチャンはその場の思いつきで言ったのか、それとも前々から思っていて適当な時期を見計らって言い出したのか、どちらだろうか。大公の顔に浮かぶ悪戯っぽい笑みと煌めく眼の光を、彼は一瞬我を忘れて見つめていた。それから男が振り返って彼の方をちらっと見た時、どれほど彼が大慌てで他に見つめるものを探したことか。顔が真っ赤になって隠しようも無いのは判っていた。

その悪戯っぽい笑みと、温かな青い眼を思い描いた時、お湯の中で彼の男根がぴくりと動くのを感じた。一瞬、彼は恥ずかしさに再び顔を真っ赤に染めて身体を強ばらせ ‐ そして彼が知る中でもとりわけ下品な悪態を付くと、片手を腹から更に下へ、彼自身へと滑らせた。最近の夢がどれだけ露骨になっているか考えれば、大公のことを想像しながら一発抜いたところで、彼の側で感じる決まり悪さが今以上ひどくなるとは思えなかった。

何をしようとしているかあまり考えすぎないようにして、彼は片手で彼自身をそっと握った。再び眼を閉じると浴槽の縁に載せた首を後ろに反らせて、彼の夢の中の、裸のセバスチャンが顔を赤く染め、身悶えして彼を求める姿を脳裏に描きながら彼自身を片手でさすった。さらに握る手を替えて、今度は両手を使って片方の親指と人差し指で根本を握り、残りの指は睾丸とその裏の敏感な皮膚を優しく擦った。もう片方の手は彼自身を引っ張るように、長く大きな動きでさすり、時には大きく膨らんだ先端に掌を滑らせた。
浴槽の硬い石に脚を突っ張って両手の中に突き上げる動きに、湯が跳ね返ってチャプチャプいう音と、快感のあまり彼が漏らす小さな声が、大理石の浴槽とタイル張りの壁にこだまとなって響いているのに気付いて彼は下唇を噛みしめた。

そのこだまが、まるで側にもう一人誰かがいて、彼の声に応えて快感と情熱のこもった声を出しているかのように聞こえた。セバスチャンが、二人の身体が重なり一緒に動くのにつれて叫ぶ声。彼がセバスチャンの中に、それともセバスチャンが彼の……?いや、そんなのはどうでも良い、二人が、一緒に……彼は背中を大きく反らせ、喉の奥から低い叫び声を漏らすと絶頂を迎え、精液が彼の手の隙間から温かな湯の中に溢れだし、激しい身体の動きに浴槽から湯が跳ね出して床を濡らした。
その後、彼は再び湯の中に沈み込み、あえぎながらぐったりと浴槽にもたれ掛かっていたが、やがてのろのろと立ち上がると予想外に震える脚で浴槽から出た。タオルで身体の水気を拭き取ると、彼は用意しておいたシャツとゆったりしたズボンに着替え、よろよろと寝室に入ってベッドに倒れ込んだ。

彼はシーツを身体に引き上げると、アッシュとガンウィンが彼の側のいつものお気に入りの場所に落ち着くのさえ待たず、眠りに引き込まれていった。

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第49章 素敵な熱い風呂 への3件のフィードバック

  1. EMANON のコメント:

    細かいご配慮wお疲れ様でございますwww

    こっからずっとアンダースのターーーーーーン!!!
    ってほどでもないかw
    しかしアンダースが挙動不審すぎてコレでバレてないと
    思ってるならとんだお姫様ですねwいやお姫様だけどw

    お姫様なのに攻めか・・・・・・orz

  2. Laffy のコメント:

    もちろんバレてるわけですが、気付くのが恋愛一年生未満のエルフなのでどうにもこうにもw

    英語だとまずい部分はささっと「見なかったこと」に出来るんですが、さすがに日本語では漢字が目に飛び込んできますから(^^; こっちのブログはサーバーだけ借りて自前DBなので、割と自由に何でも出来るのがありがたいところです。

    にしても、今回色々pixivで「やおい系」オリジナル小説を読んでみましたが、なんかFanfic.netと比べると、暗い。全体的に。しかも警告無しぶった切り(R-18なら何でも良いのか)。dub-conでさえ警告を出すのに比べるとえらい違いです。
    心の弱い人間だもので、頂いたガムテをぺたぺた貼って撤退いたしましたwおべんきょう止めw

  3. EMANON のコメント:

    hahaha
    pixivのアカウントも持っていたんですが、最近
    あまりにもしょーちゅーがくせいの巣窟になって
    ゲンナリしたんで、facebookに乗り換えたところでしたよw
    あそこはもういけませんやw

    というか身の回りに(自分含めて)ゲイとバイしかいないので
    やおいという概念が成り立たないという事実w

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