セバスチャンの食卓その２～スイーツ

PDF形式でダウンロード

彼の衣装棚について考えようかと思ったが、資料が少なすぎて挫折。というか、そもそもなぜメイジはローブを着ているのか。サークルメイジは「制服」だとしても、別にアンダースが着る必要は無いよね。
＃まあそれはファンタジー界のお約束なんだけども。

でも本人がローブが好きだと言うのだから仕方がない。優しいセバちゃんが公式ディナーパーティのために、ちゃんと肩にふわふわ毛皮の付いた新しいローブを仕立ててくれて、目の前でお着替えとかもうね。何考えてるんだ。もっとやれ～。

話がずれた。いつもの食べ物の方でいってみよう。
ブランディをデザートに出来る人（エルフか）の心理はよく判らない。甘いわけは無いだろうし？「アフター・ディナー」という銘柄のカクテルで、レシピにブランディを使うことはあるようだ。これも店によって色々。まあ、飲めない人間が考えても仕方ないだろう。

小説中ではこの前、「チョコトルテ風ケーキ」を仲良く食べていたが、カカオは作中に有るとおり北方ヨーロッパでは近世となるまで貴重品だった。それでも18世紀に入ると、南米植民地での豊富かつ安価な労働力（※）を使ったプランテーション栽培が盛んになったことから輸入量も増え、ちょっとした贅沢品という位に落ち着いたようだ。

ただし18世紀まではずっとどろどろした「飲み物」、あるいは舌触りのザリザリした固体ココアという方が良いような代物で、薬効あるいは強壮効果（もちろん、あちら方面の）があるとされ、貴族の皆様が砂糖を沢山入れて苦みを誤魔化して飲んでいた。
口の中でとろけるミルクチョコレートの開発はもう19世紀も末（明治時代中盤）の話なので、DA世界に板チョコが有ったかどうかは微妙だね。

生クリームやバターは、牧畜の盛んなスタークヘイブンでは容易に手に入るだろう。
甘味料だな。砂糖をどう調達するか。もちろんサトウキビは栽培出来ないから、甘味料としては蜂蜜とサトウカエデ、それに甜菜（サトウダイコン）となる。

サトウダイコンの品種改良が進んで糖度が上がるのは18世紀以降だし、大量の絞りかすをどうするかとか、色々難しい。サトウカエデの方が貴重な耕作面積を消費しなくて済むし、ここはサトウカエデ（Maple)の樹液を早春に採取し煮詰めて作るカエデ糖ということにしておこう。

現代では高価なメープルシュガーだのシロップだのを有り難がって「お取り寄せ」していたりするが、昔はもちろん精製された白砂糖の方が価値が高かった。DA世界の大生産国は科学技術の高いクナリは間違いないと思われるが、ドナークの方はよく判らない。あそこはテヴィンターなのかな？

後は果物。ベリー類は取りあえず何でもありそうだ。スグリにイチゴにブルーベリーにラズベリー。英語圏ではミニトマトも”Berry”の中に入るらしいが、まあそれはともかく。

クランベリーは意外と湿地帯を好む木なので、フェラルデンならそれこそカレンハド湖の周囲にはいっぱい野生のクランベリーが生えていたに違いない。そういうのをモシャモシャと食べながら若きアンダースは逃避行を続けたのだろう。

もちろんリンゴも、ブドウもいっぱいある。ブドウはもちろんワインと、多少は干しぶどうにもするだろう。

リンゴは家畜が食べる以外は搾って、サー・カレンの好きなアップルサイダーにしたり、皮を剥いて煮詰めてペースト状のアップルバターにするのが一般的なようだ。バターと言っても、もちろん乳脂肪は入っていない。ベリー類は保存が利かないので、ほとんどは砂糖と煮てジャムにする。砂糖が問題だね。どの位一般的な食べ物なのか。お金持ちのセバちゃんはともかく、一般家庭で簡単に手に入るようになるのはやはり近代以降となる。

無いものは、これはもう容易に想像が付くが柑橘類。オレンジもミカンもグレープフルーツも無い。冬が寒すぎるからね。一般的に柑橘類の耐寒気温は5℃とされるので、厳寒期に一日中氷点下となることもあるらしいスタークヘイブンでは栽培出来ない。春小麦しか作ってないみたいだし。まあ、隣国アンティーヴァから輸入だろうね。

「トーストに何を付けますか？」

ゼブラン「僕はマーマレード、出来ればブランディ入りが有りがたいね、もちろん…」
フェンリス「アンティヴァン・ブランディの。俺はバター」
セバスチャン「私はラズベリーのジャムが好きでね。無論ルバーブも悪くないが」

アンダース「んー何でも？チーズでもバターでも沢山。あ、バターの上に蜂蜜たっぷり載せてくれると嬉しいな」
他全員「……（さすがウォーデン）」

（※）婉曲表現。いや実際当時の新聞には”be made with cheap and abundant resources”と書かれていたりする。一応、ヨーロッパ本土では奴隷の所有・使役は18世紀中に違法となったが、植民地は事実上野放し状態だった。