第83章 新しい麦わら

(原作者注)最終警告:この先に男性同士のエロいシーンがあります ―もしあなたがここまで読んできてくれた方なら、大丈夫だとは思いますが。
(訳者注)もしどうしても気になる方は、飛ばして次の章へお進み下さい。第84章 再びの降伏


ゼブランは健康な方の腕を馬房の外から扉の上に乗せて、フェンリスが彼の馬に何やら囁いているのを見ていた。彼は微笑みながら、もう一人のエルフと馬が描き出す絵のような風景を見つめていた。彼らの顔はほんの数インチの近くにあって、ウォーリアーは右手で馬の首をいとおしげに撫で下ろし、左手は馬の頬に当てられていた。ようやく彼は馬の首元をとんとんと叩くと振り返って、ゼブランと目が合い顔を赤くした。
「すまない」ウォーリアーは何やら不安げにそう言った。

「何が?馬と一緒に居る君は素敵な風景だったよ。君がアリを好きなように、アリも同じくらい君のことが好きなようだね」とゼブランは言った。

フェンリスはもじもじと体重を片足からまた一方の足へ移動させて、明らかに何か考えているようだったが、それから扉に近付き、腕を伸ばすとゼブランが腕を休ませている端のすぐ側に手を置いた。彼はしばらくゼブランと視線を合わせると、再び横を向き顔をさらに赤らめた。

ゼブランは腕を降ろして手をフェンリスのすぐ側に置くと、訝しげにもう一人のエルフの顔を見つめた。
「ひょっとすると、君が馬とは容易く触れ合っているのに僕にはそうしないと、嫉妬するとでも思ったのかな?」と彼は言った。フェンリスは顔を横に向けたまま、ためらう様子で頷いた。ゼブランは微笑み、手を伸ばして二本の指で軽くフェンリスの顎に触れると彼の方を向かせた。
「僕は馬に嫉妬したりしやしないよ」と彼は優しく言って、ゆっくり身体を傾けるともう一人のエルフにキスをした。

フェンリスは一瞬身を固くしたが、それから近寄って扉に内側から身体を押し付け、恐る恐る手を上げてゼブランのうなじを覆うと指を髪に差し込み、もう一方の手をゼブランの肩に置いた。ゼブランは満足げな声を上げると、彼も手をフェンリスの頬から滑らせて白銀の頭の同じ場所に置くとさらにキスを深め、低い唸り声をフェンリスに上げさせた。

彼がようやくフェンリスを離した時にはウォーリアーは息を切らせ、彼の瞳は欲望に大きく広がっていた。ゼブランは扉の留め金を外し、フェンリスが外に出る間支えておき、それからまた留め金を掛けて彼のすぐ側に立った。
「僕に触ってみたい?」と彼は低く喉を鳴らすような声で尋ねた。

フェンリスは頷いたが、少し神経質になっているようでもあった。

ゼブランは安心させる様に彼に笑いかけるとあたりを見回した。アリの隣の馬房は、新しい麦わらが厚く敷かれている他は空っぽだった。
「こっちへおいで」と彼は言うと、近くに重ねてあった鞍に掛ける毛布を一枚取り――城の厩と違ってここには独立した馬具置き場が無く、装備はその代わりに壁の掛け金に吊されるか、棚に置かれるか、厩と反対側の壁に沿って並んだ箱に入れられていた――それから麦わらを馬房の片側の端へ蹴り寄せてうずたかく積み上げると、その上に毛布を掛けて、扉の側で彼のすることを不安げに眺めているフェンリスの方に振り返った。

彼はフェンリスを挑発するように見つめながら、腕の吊り帯を外して床にふわりと落とし、それからチュニックも脱いでやはり床に落とした。彼がレギンスの紐に手を掛けたときフェンリスがついに身を動かし、背をまっすぐに伸ばした。
「いや」と彼は静かに言った。

ゼブランは訝しげに彼を見つめた。「いやって?」と彼は尋ねた。

フェンリスは大きく息を吸うと、馬房の中に一歩入って扉を彼の後ろで閉めた。
「後で。その……」彼は消え入るような声で言うと、ためらいがちに左手をゼブランの方に上げながら数歩前に進んで、しかし後一歩のところで立ち止まった。

「どこでも好きな所を触っていいよ」とゼブランは優しく言った。

フェンリスはゆっくりと最後の距離を縮め、ゼブランの胸に彼の手を当てた。彼はじっとそこにしばらく立って、ただ彼の手がそこにあるのを見つめていたが、ようやくゆっくりともう一方の手も上げた。彼はゼブランの横顔に刻まれた入れ墨に軽く触れると、さらに少し近づいてゆっくり身を傾けアサシンにキスをした。

優しくためらいがちなキスが、唇を軽く掠めるように繰り返され、これも悪くないとゼブランは思った。それが終わると彼はフェンリスに微笑みかけ、ただ他のエルフのすることを立って待っていた。ようやく彼は何かしても構わないと、心を決めたようだった。

フェンリスはさらに数分、ただゼブランの身体に軽く触れては見つめていた。彼はとりわけエルフの胸を覆い下に降りていく入れ墨に興味を引かれたようで、その続く先まで指先で追って身体を巡らせては、時折目立つ模様のところで指を止めた。
「これは、何か意味が有るのか?そもそもなんのために?」としばらくして彼は不思議そうに尋ねた。

「ほとんどのものには意味が有るよ、もちろん」とゼブランは肩越しに彼の方を振り向いて話した。
「主には装飾のためだけど、クロウの中では特別な意味を持つんだ、それと僕は長い間、何か重大な出来事を記念するために入れ墨を加えるのを習慣にしているから」

フェンリスは難しい顔付きをすると、さらにゼブランの周りを歩き回ってゼブランの尻の上部から腰帯の下に隠れて続いている、長い入れ墨の線を辿る指を眺めていた。
「例えばどんな?」彼はようやく再び顔を上げると興味深そうに聞いた。

「そう、例えばこれは」とゼブランは言うと、身体を捻って彼の背中の下を覆う入れ墨の一本を示した。
「触ってみれば、それが傷跡を覆っているのが判ると思う……そこはアーチ・ディーモンとドレイコン砦の上で戦った時に、やつが引っ掻いたところだ。僕は幸運だったよ、爪一本の、ほんの先っぽがかすめただけだったからね、そうで無ければ間違い無く真っ二つだ」

フェンリスはもう一人のエルフの背後に回り込んで、その入れ墨を触ってみてゆっくりと頷いた。
「なるほど」と彼は言った。彼はしばらくゼブランの腰の裏を温めるようにそこに左手を当てて、それからもう一方の手を上げると、アサシンの痩せ細った方の肩を軽く撫で下ろした。
「痛むか?」と彼は低い声で尋ねた。

「傷跡かな、それとも腕?傷の方はひどく暑かったり寒かったりすると時々ちくちくするよ。腕は今少しばかり痛んでいるけど、今日午前中に台所で腕を使いすぎたからね」

フェンリスは頷き、それから身を傾けてゼブランの左肩に軽くキスをすると、ごく静かにそこから首筋まで唇を撫ぜるように動かした。ゼブランはまた満足げな声を上げると、背高のエルフが触れやすいように頭を反対側へ傾けた。キスを続けるに従ってフェンリスの息遣いが次第に深く、僅かに速くなっていくのが彼にも感じられ、背後のエルフに彼がもたれたときに、そこに明らかに興奮している証拠を感じても驚きはしなかった。フェンリスは彼がもたれ掛かってきた時に一瞬動きを止めたが、それからまたキスを再開して、ゼブランの首筋から耳元へ辿り着くまで唇で温かく触れながら、手を再びゼブランの肩に乗せた。彼はそこで再び動きを止めて数回耳元を息がかすめ、それからゆっくりと彼はアサシンの耳の曲線を舌でなぞった。

ゼブランは彼の側に居る男の温かみと、軽くからかうようなキスに、少しどころでない興奮を感じ始めていた。フェンリスが耳の尖ったところを舐めて軽く噛んだ時、彼は思わず歯の隙間から息を吸い込むと快感にまぶたを半分閉じた。
「僕も、触って良いかな?」と彼はとうとう、低く擦れた声で尋ねた。

フェンリスは動きを止め、それから頷いて「ああ」と彼も同じく擦れた声で囁いた。

ゼブランはゆっくり彼の正面に向き直り、その間フェンリスが上に上げた手をまた肩に降ろした。ゼブランは彼の両手をフェンリスの細く引き締まった腰に置くと、ゆっくりとチュニックの下に手を滑り込ませ、暖かな皮膚と冷たく盛り上がった紋様の線を感じ取った。フェンリスは最初ひどく静かに立ち尽くしていたが、それから快感に小さく溜め息を付くとゼブランの手の感触に身を任せ、彼自身の手はゼブランの背中を滑り降りて彼をさらに引き寄せた。
ゼブランがフェンリスの緩いチュニックの下で同じような動作をする間、ウォーリアーの両手はゼブランの背中を少しの間上下に撫で、そこの暖かな皮膚を、その下の引き締まった筋肉の形を、背骨の突起をまさぐっていた。ついにフェンリスの手がさらに下に降りて、ゼブランのレギンスの腰紐にぶつかってそこで止まった。彼は再びじっと動きを止めると、その布きれの端にぶつかった指先だけを動かしていた。

ゼブランは頭を傾けてウォーリアーを見上げた。フェンリスの眼は半ば閉じられ考え込む様子で、また少しばかり不安げに見えた。ゼブランは彼の手をチュニックの下から出すと、裾を優しく引っ張った。
「これを脱いだ方が良いんじゃ無いかな?」と彼は静かに尋ねた。

一瞬のためらい、そして頷き。フェンリスはゼブランから手を離し、一歩後に下がって彼自身のチュニックを脱ぎ捨てゼブランの隣に落とし、そしてためらうこと無くレギンスの紐を解き始めた。ゼブランも即座に自分の紐を解き、お互いに相手がレギンスを脱ぐところを眺めていた――ゼブランは同時にブーツを蹴飛ばして靴下を脱ぐ必要もあった――それから二人は下着だけの姿でお互いの前に立った。ゼブランはごく静かに立って、ウォーリアーがどう反応するかをただ見ていた。

フェンリスはゆっくりとゼブランの頭から足の先まで眺め降ろして、また顔を見つめ、頬は紅潮し呼吸はせわしなかった。彼の瞳はほとんど完全に広がり暗くなっていた。ゼブランもその間、もう一人のエルフを同じようにじっと見つめた。彼は面前にあるその美しく引き締まった身体に触れ、フェンリスの紋様の隅々まで、手か舌で全てをなぞりたいという衝動と戦っていた。彼自身がほとんど目に見える速さで硬さを増していくのに気付いており、目の前のウォーリアーも同様の反応を示しているのを見て嬉しくなった。

「何を考えてるのかな?」とゼブランは優しく尋ねた。

フェンリスは幾度か大きく息を吸い込んだ後ようやく答えた。
「君に触りたいと」

ゼブランは白い歯を見せて笑った。
「僕も全く同じことを考えていたよ。何て都合が良いんだろう」
彼はそれでもじっと立ったまま、その先の行動が何であれフェンリスに始めるようにさせた。

ついにウォーリアーはひときわ大きく息を吸い込むと下着を脱ぎ、彼の勃起が締め付けられていた布地から解放されて上に跳ね上がった。ゼブランも静かに同じ行動を真似した。

「俺は次に何をして良いのか判らない」とフェンリスはそう言った。それから、ごく小さな声で告白した。
「怖いんだ」

ゼブランは頷くと、毛布に覆われたわらの方へ行って、その上で横になった。彼は自分の隣を片手でぽんぽんと叩き、そしてまた長いことためらった後でフェンリスも彼のすぐ側に身を横たえ、恥ずかしがりつつも同時に何か期待する様子だった。

「僕に手ほどきをさせてくれるか?」ゼブランは優しく尋ねた。

フェンリスはゼブランにほとんど訴えかけるような表情で、黙って頷いた。彼の勃起は不安のうちに少しばかり緩んでいたが、しかし完全に萎れてはいなかった。

「またお互いに触れ合うところから始めよう」とゼブランは静かに説明した。
「僕が君に触れて、そして君も同じように僕に触れる、いい?」

フェンリスはほっとした様子で頷いた。ゼブランは右半身を下に身体を起こしてフェンリスに向き直ると、ウォーリアーが同じように左側を下に彼の方を向くのを待って、手を伸ばしてフェンリスの腰に手を置いた。彼はその後もごくゆっくりと、フェンリスの反応を確かめながら優しく触れては撫でるのを繰り返して、もう一人のエルフが今やっていることに徐々に慣れ、最初の興奮がゆっくりと戻ってきて、彼の恐怖心に打ち勝つまで辛抱強く待った。馬房の中には彼らの徐々に激しくなる息遣いと、隣の馬達が身動きする際の微かな音だけが響いていた。

フェンリスの表情から間違い無く恐怖が消えたのを見てようやく、彼はふわりともう一人のエルフの勃起を軽くさすった。フェンリスはためらうこと無く彼の動作を真似し、ゼブランはその彼に向かって勇気づけるように微笑んだ。彼の動作を忠実に真似するフェンリスが引き起こす快感は無視して――とにかく、彼が出来る限り――ゼブランはもう一人のエルフがどうやって触れ、どうやって撫でれば一番喜び、一番興奮するかを探し出そうとしていた。
フェンリスが快感に我を忘れ、横向きの姿勢を保ち続けることが出来ず手を身体の横に落とすまでそれほど長くは掛からなかった。ゼブランは優しく彼を仰向けにすると、彼自身は上半身を起こして両手を自由に使えるようにした。しばらくしてフェンリスは叫び声を上げると、毛布を強く握りしめ背を大きく反らせて絶頂を迎えた。

ゼブランは再び横たわると、消耗したフェンリスがどさりと毛布に倒れ込むのを優しく抱きしめた。フェンリスはしばらくの間そのままじっと横たわり、息を整える間顔をゼブランの肩に埋めていたが、それから身動きするとゼブランを押しのけた。アサシンは慌てて彼から手を離すと彼の顔を覗き込み、あるいは抱きしめたことでウォーリアーが動転したのではと心配したが、フェンリスに狼狽したような様子は見られなかった。その代わり彼はゼブランの顔を見つめ、それから視線を彼の萎えつつある勃起に落とした。

「君はその……」フェンリスはためらいながら、低い声で言うと、手をゼブランの胸に当てて訝しげな表情で彼を見つめた。

「まず君を満足させたかったからね」とゼブランは優しく言った。

フェンリスは長い間黙って彼を見つめていたが、それから顔を赤らめると頷いた。
「なら、俺の番だな」と彼は驚くほど確信ありげに言うと、優しくゼブランの胸を押した。
「そこに寝ろ」

ウォーリアーが何をしようとしているのか好奇心をそそられて、ゼブランは言われた通りにした。フェンリスはちらりと、どうしようかというように彼を見下ろしたが、それから座る場所をずらしてアサシンのそれを彼の両手に取った。彼は恐る恐る、彼らが先にやったことを繰り返し始めると、下唇を神経質そうに噛んで横目でちらちらとゼブランの顔を見ていた。実際それは実に興奮をそそり、今やゼブランはもう一人のエルフが掻き立てる快感に身を任せて、何かとりわけ彼の好むことをフェンリスがすると満足げな声を上げた。フェンリスは彼の手の下でゼブランが快感を感じている様子をみてさらに勇気づけられ、より自信を持って手を動かした。

ゼブランの眼は閉じられ、頭を後ろに反らせるとフェンリスの温かな両手の中に彼自身を繰り返し突き立てた。彼はウォーリアーが再び位置を変えたのに気付いたが、その後全く予想外に、彼自身の先端が熱く湿ったものに包まれたのを感じて衝撃に眼を見開いた。彼は一瞬動きを止めると心底驚いて彼の下半身を見やり、フェンリスがその唇と舌を動かして彼自身を優しく舐めながら、微かに心配そうな表情で彼を見上げているのを見つめた。フェンリスの両手が再び根元をきつく握りしめると擦り上げ、彼も快感のうちに絶頂を迎えると大きな叫びを上げた。

フェンリスは一瞬しかめ面をすると、座り直してわらの中へ吐き出し、それから手の甲で唇を擦った。彼は少しばかり動揺しているように見えた。
「これで……これは正しいやり方だったのか?」とフェンリスは心配そうに尋ねた。

ゼブランは白い歯を見せて笑うと彼も身を起こし、思い切って彼を強く抱きしめたいものだと思いながら、彼の両手を取って握りしめることで妥協した。
完璧だよ。素晴らしかった。最高だ……君がああいうことをするのは、まだまだずっと先のことだと思っていたよ。君はただ美しいだけで無く、実に勇敢だね」
彼はそう暖かく言うと、身を乗り出してもう一人のエルフに深くキスをした。

フェンリスは本当に嬉しそうで、キスが終わった頃にはずっと安心した表情になっていた。

「おいで、綺麗にしてから屋敷に戻って寝よう」とゼブランは言った。彼は固く捻った一握りのわらでフェンリスの下腹部と太腿の上で乾きつつあるものを拭い落とすと、彼らは再び服を着て毛布をもとの積み重ねたところに戻し、わらの山を蹴飛ばして平らにした。それから彼らは黙ったまま、しかし親しい雰囲気と共に歩いて屋敷へと戻った。

彼らがベッドに入るため着替えた時、フェンリスがまたどこか自信なさげな様子を見せていることにゼブランは気づいた。彼はベッドによじ登ると、毛布の端を上げて見せた。
「こっちに来ない?」と彼は期待する表情で尋ねた。

フェンリスは一瞬ためらった後、小さく頷いて彼のベッドに滑り込んだ。ベッドは何しろ一人用で狭苦しかったが、それが幸いした。お互いぴったり寄り添って眠る理由には、それだけで十分だった。彼らはその夜ぐっすりと眠った。

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