第118章 心の内に

(翻訳者注)この章には成人向け描写が含まれます。


一日が過ぎた。さらにもう一日。落ち着かない平穏の日々が続いたが、チャントリーや他の何かの動きを示す様子は無かった。セバスチャンはともかく当面の危険は去ったようだと思い始めたが、しかしまだこの先何が起きるか気がかりだった。彼に対して、彼の領民に、領地に。アンダースに。ここや他の場所にいる、彼の全ての友人達に。

カレン騎士団長が、彼の部下達の一群と共にロレンス団長からの伝言を持って到着した。アンズバーグのサークルにおいてメイジ達を粛清する代わりに護って逃げ延びたことで、彼らは既にチャントリーの反逆者となっていた。彼とその配下のテンプラー達は、その保護下にあるメイジ達の護りをしっかりと固め、オディールを通じてチャントリーが彼らに加えようとする圧力に怯むつもりはないと彼は伝えてきた。
セバスチャンにとって、チャントリー内部にこのような亀裂が生じるのを見るのは辛いことであったが、しかし同時に、彼らの義務はメイジの保護であり、監禁や殺害ではないと信ずるテンプラーが居ることに彼は喜ばずには居られなかった。もはやアンドラステの言葉の真の精神に従っていないと思わざるを得ない、今の堕落したチャントリーからの命に盲目に従うのではなく、それをはね除けた人々が居るということに。

カレンは同時に、もう一つセバスチャンには良い知らせなのかどうか悩む話を持って来た。カレンはヴァイカウント・アヴェリンから、ようやく彼女の街も平穏を取り戻したので、カークウォールに戻りサークルの再建を手伝って欲しいとの依頼を受け取ったのだった。
セバスチャンはこの男が居なくなるのは残念に思ったが、しかしサークルの再建は必要な仕事であり、メレディスの支配下での有様を最も良く知るこの男よりふさわしい人物は他にそれほど居ないと思われた。彼はカレンと部下達の幸運を祈って、彼らが南へ向かい山脈を越えてカークウォールに戻る旅程に出発する前に、必要とする補給品の手配を申し出た。

彼は毎晩アンダースと共に、彼のベッドかあるいはメイジのベッドで楽しく過ごした。二人の気分に合わせて、時にはすぐ眠りに付き、時にはセックスに及ぶこともあった。彼の体力は既に充分に回復し、あの夜を今度は彼のベッドで、彼が主導権を握って繰り返そうという計画を真剣に考えるようになった。

彼らの最初の夜同様に、その日も特別な物にしたいと彼は考えていた。二人だけで夕食を摂り、それから長い夜を共に過ごし、そして出来れば次の日も寝過ごしても構わないような。午前中に診療所を開けない日は毎週一日しか無く、彼らはその日教会での礼拝に参加することになっていた。しかしその日は昼まで寝ていても、朝方の代わりに午後の礼拝に出席すれば良いと彼には判っていた。

その日の前日の夜にアンダースを夕食に招待した時の、男の目のきらめきに思わず彼は微笑んだ。彼自身と同じくらい、アンダースもその夜を待ち望んでいる印だった。


セバスチャンは部屋を見渡し、何もかも完璧であることを確かめた。夕食の料理は既にテーブルに並べられ、大皿の中で温められていた。赤ワインは丁寧にデカンターへ注がれて呼吸をさせ、デザートはサイドボードの上の、大きな鉢に入った氷の上で冷たく冷やされていた。彼の護衛達は、今夜は何かよほどの緊急事態で無い限り彼の邪魔をしないようにと命じられていた。彼はそわそわと手で髪を梳き、何も見落としが無いことを願い、寝室の方から床に短靴が擦れる音にはっとして振り返った。アンダースがそこにいた。

彼は温かく男に微笑み、彼の方に向かってくるアンダースもお返しに嬉しそうな笑みを見せた。二人ともごく簡素な服を着て、どことなく似ていた。茶色のレギンス――セバスチャンは濃い焦茶色の、アンダースは淡い茶色の――に、上はクリーム色の無地のリネンシャツで、二人ともデーリッシュのスカーフを巻いていた。アンダースの温かな金色と、白地に金糸で繊細な模様を描いたセバスチャンのスカーフ。

「メイカー、とても素敵だ」とセバスチャンは静かに言い、アンダースに歩み寄ると、二人は暖かなキスを交わした。

「君も」とアンダースは答えるとテーブルを眺めて、あたりに漂う良い匂いを嗅いだ。
「良い匂いだね。今日の料理は何かな?」

セバスチャンは微笑んでテーブルに近づくと大皿の覆いを取った。
「ローストビーフとポップオーヴァー、新ジャガとチャイブを入れたバター、初物のグリーンピースにミントソース、にんじんの甘煮とサラダ。それともちろん、グレービーソースをたっぷり」

アンダースは白い歯を見せて笑った。
「実に旨そうだ。まだ他にも何か来るのかな?」

「いいや。さあ、座って食べよう」とセバスチャンは答え、二人は顔を見合わせて笑うと席に着いた。二人の椅子をセバスチャンが隣同士に並べて置いたのを見て、彼のコテージでのもっと小さなテーブルでの、もっと簡素な夕食を思い出しアンダースは微笑んだ。もちろん、あの食事同様に、二人は誰はばかることなく笑いあっては互いの身体に触れ、時折キスをして楽しんだ。

今夜のメニューは相手に食べさせるにはあまり向いているとは言えなかったが――次の機会のために覚えておこうとセバスチャンは思った――しかし二人はともかく挑戦して、テーブルクロスの上に豆とバターの付いたジャガイモの欠片を大量にまき散らした。セバスチャンは一度ポップオーバーをアンダースに食べさせようとして、中身のグレービーをそこら中にこぼさないよう、口から溢れそうになるのをアンダースはほとんど一息で吸い込まなくてはならなかった。
その後でセバスチャンはメイジの手を取ると零れたグレービーを綺麗に舐め取り、二人は面白そうな、しかし情熱のこもった視線を交わした。

ようやくアンダースの途方もない――食べ物への――食欲も満たされ、二人は良い香りのナプキンで手を拭いて綺麗にすると暖炉の側へ席を移し、デザートの前の気分転換にしばらくワインと会話を楽しんだ。二人は長椅子の両端に注意深く距離を取って座り、ワインをすすりながら庭のことや犬達、今彼らが読んでいる本について語り合った。しばらくしてセバスチャンがワイングラスを置くと立ち上がり、アンダースにそこに居るよう手を振ってサイドボードへ歩み寄った。彼は氷水で冷やされた大皿の底を乾いた布で拭き、二人が座っていたところへ持ってきた。

彼はアンダースの側に腰を降ろして、その大皿を彼らの膝の上に載せると蓋を取って横に置いた。大皿の中には更にいくつかの容器が入っていて、一番大きな皿にはその日の朝に摘み取られた新鮮なイチゴがたっぷり、中くらいの容器にはふんわりとした甘いホイップクリーム、そして最後の小さな容器には、焦げ茶色のチョコレートソースが入っていた。

彼らは互いに脚を組み、長椅子の上で身体を捻って近々と向かい合うと二人の膝の上に置いた皿からイチゴを食べた。時には自分自身に、時には相手にイチゴを食べさせ、もたれ掛かってはキスを交わした。イチゴが無くなった後で、セバスチャンは指で残ったホイップクリームをすくって貴重なチョコレートソースを付け、アンダースに指を差し出した。メイジはクリームを吸い込んだ後、大公の指に舌を這わせてべたべたを丁寧に舐め取った。今度はアンダースがお返しにクリームを食べさせ、二人は愉快そうに声を立てて笑いながら、時折甘いキスを交わした。クリームも無くなった時には二人とも顔も手もべたべたで、馬鹿みたいにお互いを見ては顔をほころばせて笑い、とても幸せだった。

「さてと。この続きは寝室でしないか?」
セバスチャンは眼を楽しそうに煌めかせ、僅かに擦れた声で尋ねた。アンダースは頷いて同意した。二人は立ち上がると皿をサイドボードに戻し、デザートを冷やしていた水で手と顔のべたべたを拭い去って、セバスチャンの寝室へと向かった。


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アンダースは身を翻してセバスチャンを見つめた。
「僕の番だ。何をして欲しい?」と誘いかけるような低い喉声で彼は尋ねた。

セバスチャンは深く息を吸い込み、ほんの少し自信なさげに唇を舐めた。
「その前に一つ質問がある。私を信じて、お前を縛らせてくれるか?」

アンダースは瞬きをして、思わず反射的にイエスと言いそうになったが、それから言葉を切って真剣に考えた。
「ああ」と彼はしばらくしてから言った。
「信じている。それで君は……?」

セバスチャンは眼を悪戯っぽく光らせて笑い、頬にはえくぼが浮かんだ。それから彼は手を伸ばして、アンダースの頬を軽く撫でた。
「ありがとう」と彼は静かに言って、メイジの頬から首筋へと指を撫で下ろし、スカーフを優しく引っ張って解いた。
「服を脱いで、ベッドの上に仰向けになれ」彼は柔らかな絹を指の間に通しながら、熱した眼差しを向けて命じた。

アンダースは頷き、あの夜と同じく優雅に服を脱いだ。彼らのプレイに彼が興奮しているのは一目で明らかで、それを見たセバスチャンも更に興奮が高まった。アンダースがベッドの上に横たわると、彼は歩み寄ってその端に腰を掛け、スカーフを幾度も指の間に通してその手触りを楽しみながら、男の余分な贅肉の一切無い引き締まった姿を賛嘆するように見つめた。その一見痩せ細ってさえ見える身体には、実に驚くべき力が込められていた。

彼は身を傾け少しばかり荒っぽくアンダースにキスをし、呻き声を上げ唇を開けてもっと奥へと誘うメイジに、快感の戦きが背骨を真っ直ぐ下り彼の股間を張り詰めさせた。
しばらく彼は舌で口中を蹂躙し、それから身を起こし頬を赤く染め彼を求めるメイジの姿を見て、笑みを覆い隠した。彼はアンダースの髪を額から除けると再び座り直した。
「手を上げて、頭の上で重ねろ」と彼は固い声で命じた。

彼はアンダースの手首に絹のスカーフを巻くと結び目を作り、きつく縛るのではなく、ただメイジの手が抜け出さない様にして、両端をベッドの頭板の柱に結び付けた。彼はそれから自分のスカーフを解きアンダースの右足首とベッドの脚板を結び合わせた。スカーフには充分な長さがあって、彼はアンダースを縛ったまま様々な体位を取らせることが出来た。
彼は再びベッドの足元に座り直し、片手でアンダースの足首から太腿まで撫で上げて、メイジがその感触に身体を震わせるのを感じた。アンダースは彼をじっと見つめ、瞳は欲望に黒々と広がり、その男根は既に固く勃ち上がり、激しい鼓動と共に脈動していた。

「本当に私を信じてくれるか?」セバスチャンは低くビロードのように滑らかな声で尋ねながら、アンダースの膝のすぐ下を片手できつく握りしめ、再びメイジがその声に震えるのを感じた。

アンダースはゴクリとつばを飲みこみ、唇を舐めた。
「ああ」と彼は擦れた声で言った。

「よし」とセバスチャンは同じく低い声で言うと、手を上げてアンダースの内股を指で軽く擦りながら撫で上げ、睾丸に触れる直前で止めた。彼はその手を再び太腿の付け根から足首まで一気に撫で下ろすと、近くに座り直して今度は両手でそれぞれの脚を握った。
彼はそのままゆっくりと、アンダースの身体を足首から手首に至るまで全て手で撫でて進み、その異なる皮膚の感触と、体毛の手触りを感じていった。脚の透明に輝くか細い体毛、股間のもじゃもじゃと曲がった硬い毛、そこからへそに至るまで薄く続く、よりまっすぐな毛。そこから上、少なくとも彼の胸には驚くほど毛が無く、彼自身と比べて遙かに体毛が少なかった。
セバスチャンはメイジの脇の下の細長い毛を軽く引っ張り、それから指先で上腕部の赤金色の一刷毛をそっと撫でた。彼はそれからアンダースの頭を持ち上げて髪を縛っている紐を取ると、その長い束を指で梳き、体毛と比べ如何にも滑らかな絹のような手触りを楽しんだ。

セバスチャンの念入りな調査が終わる頃にはアンダースは全身を震わせ大きく喘いでいた。セバスチャンはベッドの上で身体を滑らせ、アンダースのウエストの隣に座るとアンダースに覆い被さるように身を傾け、再びキスをしながら睾丸を手に取った。彼は深く舌を差し込みメイジの口を貪り、やわやわと慎重に滑らかな玉を指の間で滑らせた。叫ぶ声はセバスチャンの口に吸い込まれ、アンダースの身体がベッドから浮き上がると精液をおびただしく自らの腹に撒き散らした。

セバスチャンは自らの痛いほどに張りつめた局部は無視して立ち上がり、近くに置いてあった柔らかな布を取って丁寧にアンダースを拭いて、再び座り直した。彼は再びメイジの身体に触れ、引き締まった筋肉を腹から胸、肩、そして腕と撫でては時折強く握ってその感触を楽しみ、それからまた腹部へ戻ってきた。アンダースの勃起は既に復活していて、彼は前屈みになってその先端だけを舌の先で舐め回し、アンダースが唸り声を上げて腰を上に突き上げようとするとすっと頭を引いた。彼は笑みを浮かべて全身をちらりと眺めると、アンダースの男根を両手で包み込み、ゆっくりとリズミカルに擦り上げて、かなり短い間に再び絶頂を迎えさせた。

再びセバスチャンはメイジを綺麗に布で拭くと、それから注意深く自分の服を脱いでベッドの横にまとめ、ようやく自らの張りつめた勃起を解放した。彼はこの場でメイジを奪いたくて堪らなかったが、しかし代わりに彼はベッドの側に置いておいた、ほとんど臭いの無い柔らかな油軟膏を手に取り、幾らかを彼自身に塗り広げると、アンダースの常人離れした体力のお陰で既に勃ち上がりつつある男根にも塗りたくった。彼はほとんどの体重を自らの両膝に掛けたまま男の身体にまたがると、二人の男根を一緒に彼の手の中へ包み込んだ。それから彼はゆっくりと腰を振り、自らの手が作る輪の中へ突き入れ、手の中で滑らかな軟膏と一緒に二人のものを擦り合わせた。
すぐにアンダースも、手首と片足を縛られた姿勢で出来る限りの強さで突き上げ始めた。敏感な肌が擦れ合う感触は言葉にならないほど素晴らしく、セバスチャンが絶頂に達してアンダースの腹部と彼の手に精液を迸らせるまで、それほど時間は掛からなかった。アンダースも最後の不規則な数回を突き上げた後、荒く擦れた声で叫びながら達した。

セバスチャンは少しばかり脚が震えていたが、ともかくもアンダースの上から這うように降りて布を取り、彼らの身体を拭き取った。その後彼は水差しからカップに水を注ぎ、それをアンダースがすする間頭を支えてやり、彼自身も幾らか口に含んだ。それから彼はメイジの体位を変え腹ばいにさせると、髪の毛を手にとって再びその手触りを楽しみ、少し捻って太い束にすると片方の肩の横に降ろした。メイジの半ば横を向いた顔と肩が彼の下で露わになった。

アンダースの肩から背中、太腿にまで広がる盛り上がりねじくれた傷跡を、セバスチャンはまず肩から上腕部を覆う長い傷から探索した。この前の夜のように指では無く、彼の唇と舌とで、口付けては舐め、時折軽く歯を当てて、アンダースの皮膚に刻まれた傷跡全てを静かに確かめていった。彼はこの男に為された仕業を憎み、チャントリーに支配された場においてはその行いが認められ、許されていたと言うことを憎んだ。
これこそが、この男がメイジで有るというそれだけの理由でこのような事が許され、正しいと考えられてきたそのことが、ディヴァインの計画や行動より何よりも、チャントリーがどれ程まで堕落したかを、ありのままに彼に示していた。しかしその傷跡はアンダースの一部であり、今のこの男の姿を形作った一部分だった。それゆえにセバスチャンは傷跡が示す過去の暴力とそれを行った者達への憎しみを抑えて、ただそれらに口付けし、愛撫した。その傷跡を背負う者が故に、避けることを拒み、認め、受け入れた。

彼はアンダースの背中の、腰骨の上あたりまでずっと舌を使い口付けを繰り返しながら、両手で尻の上から体重を掛けた。彼はアンダースが再び放出を求めて、彼自身をベッドに擦り付けるリズミカルな動きを感じることが出来た。彼は片手を離してメイジの下に滑り込ませ、傷跡を口で探索し続けながら、アンダースのものを再び手の中に握った。アンダースは幾度も繰り返し彼の手に向かって突き入れ、とうとう大きく叫ぶと激しい絶頂を迎えた。

セバスチャンの頭には別の計画が浮かび、すぐに布を取って拭こうとはしなかった。彼は手をアンダースの身体の下から引き抜くと、尻を十字に走る微かな傷跡に沿って舐め、引き締まった尻の曲線をからかうように軽く噛み、両手で尻から太腿まで撫で下ろした。それからようやく彼はメイジの両脚を押し広げて、背骨の一番下からゆっくりと、円を描くように焦らすような動きで下へ、下へと舐めて行き、そこに隠れているシワの寄った粘膜に舌を這わせた。
彼は初めのうちはそっと試すように、それから次第に力を込めて舐めて、アンダースが鼻声とも呻きとも付かない音を出し、再び腰をベッドに擦り付け始めるのを感じた。その後彼は軟膏を指ですくい取り、彼の舌を指で置き換えて静かに押し入れると、男の呻き声はすぐに物欲しげな叫びに変わった。そのままの姿勢で、彼は片手で縛っていない方の太腿を握りしめ、アンダースの中に深々と指を挿し入れ、指を滑らかに抜き差ししながら男が突然大きく身を震わせて叫び声を上げるまで中を探り、指先を曲げて幾度も擦り付けた。アンダースはしゃがれた声で大きく叫ぶと再び絶頂に達して、ベッドをさらに汚した。

セバスチャンのものも再び勃起し始めていた。彼はそれからしばらく時間を掛け、ふんだんに軟膏を使って挿し入れる指を増やして行き、二人共に準備が整ったところで彼はちょっとばかり荒っぽくアンダースに挿入した。無論メイジを傷つけるほどではなく、ただ二人が共に彼の興奮を大いに楽しめる程度に。そのような激しい行為は、ただのヒューマンの体力では精々一晩に一度か、どうやっても二度が限界だと彼には判っていた。彼らはまるで声を合わせるように大きく叫び、セバスチャンが頂点に達したそのほんの数呼吸後に、アンダースも大きく身を震わせて精を放った。

それから彼はアンダースを横向きに寝かせ、呼吸を整えながら布を手にとって男の身体を拭いて綺麗にすると、自分も横になってメイジを抱きしめた。二人の身体からは汗が滴り落ちていた。その後で彼はまた水を飲み、アンダースを仰向けに転がしてから再開した。彼は彼の口と両手を様々に駆使してメイジを攻め立て、最初の夜のように喉元深くまでアンダースのものを飲み込み、あるいは後ろに指を抜き挿ししながら舌で舐め回し、さらに数回メイジに絶頂を迎えさせた。

彼の計画はかなり行き当たりばったりだったとはいえ、どうやら成功裏に終わりそうだった。立て続けの絶頂はさすがのグレイ・ウォーデンの体力をも打ち負かしつつあった。アンダースの表情には、彼らの最初の夜にセバスチャンの顔にあったのと同じに違いない、満ち足りた疲労感が漂い始めていた。その頃にはようやく彼のものも再び硬く勃起し、彼はアンダースの足首のスカーフを解き、男に後ろ向きで両手両膝を付かせるとゆっくりと突き入れた。今度はゆっくりと時間を掛けた行為で、アンダースが二回達した後、セバスチャンもようやく大きく身を震わせ叫び声を上げながら絶頂を迎えた。

メイジはその後で見るからにしおたれ、身体中が汗と、軟膏と精液に覆われてぐったりと疲れ果てた様子だった。セバスチャンもかろうじてそれよりはマシという程度だった。アンダースに繰り返し絶頂を迎えさせること自体も相当な労力が必要で、しかも彼はただのヒューマンだった。それでも彼は、アンダースが彼にやったのと同じ程度までメイジを疲れ果てさせるのに成功したことを心の底から嬉しく思った。

彼はアンダースの手首のスカーフを解き、手首と足首を優しく擦って傷の無いことを確かめ、それから背中を愛撫しキスをして、近々と彼を抱きしめた。
「風呂は?」と彼は静かに聞いた。その時、二人が寝室に入ってからというもの、彼らはほとんど言葉を交わさなかったことに初めて気が付いた。二人はほとんど全てのことを、見交わす目と、唇同士の触れ合いと、手と、喜びと情熱の叫びで語り合っていた。言葉は要らなかった。

アンダースは頷いた。二人はよろめくようにベッドから這い出し、互いに支え合いながらよろよろとセバスチャンの寝室に隣り合う豪華な浴室へと向かった。浴槽の温かなお湯に浸かり互いに洗い合う内に、セバスチャンは後もう一回は出来る気がしてきた。彼らはその場で、豪勢な浴槽の中で、アンダースが端に腰を掛けて背中を壁に押し当て、脚を大きく広げて反対側の縁に突っ張り、セバスチャンはその脚の間に膝立ちとなった。
つるつる滑る厄介な浴槽に実に不都合な体勢で、しかし信じられないほど素晴らしく快かった。セバスチャンはアンダースの髪の毛に顔を埋め、石けんと汗と男の匂いを嗅いだ。それからメイジの首筋に軽く歯を当ててキスをしたとき、彼はこの夜、ずっと心の中で言っていた言葉をついに見つけた。この夜だけでは無く、何日も、何週間も、もう何ヶ月も。

「愛している」と彼はかすれ声でアンダースの耳元にささやき、彼の肩に廻されたメイジの腕がきつく抱き、驚きと快感に大きく叫び声を上げるのを感じた。一瞬後にセバスチャンも、その夜最後の絶頂を迎えた。

彼のものはアンダースの中に深く覆われたまま、メイジの腕が彼を抱き、彼の頭はアンダースの肩にもたれ掛かっていた。彼はアンダースが身を震わせるのを感じて、頭を上げ男の顔を見た。その頬には涙が流れ落ちていた。
「アンダース?」とセバスチャンはためらいがちに、不安げに尋ねた。

アンダースは瞬きをすると大きく息を吸った。
「愛してる」と彼は荒く擦れた声で言い、セバスチャンの肩を抱く力を緩めて、指をセバスチャンの髪に差し込んだ。
「僕も愛してる」彼は繰り返すと、セバスチャンの眼を一心に見つめ、それからキスをした。

それから彼らは幾度となくキスを繰り返した。塩味のキスはよけいに甘く感じられた。互いに愛撫するように身体を綺麗に洗い、浴槽から出てタオルで水気を拭うと寝室に戻って、汚れたシーツを剥ぎ取ったベッドの上で彼らは手足を絡め、身体をくっつけて横たわった。彼らの間にある物が何であったのかようやく理解した二人の、新たな驚きが彼らの眼には浮かんでいた。

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