第130章 歴史の授業

アンダースは痛みにたじろぎながら、フェンリスが馬の鞍と荷袋を積み上げて作ってくれた低い背もたれに寄り掛かった。彼の太腿の腫れて血の滲む傷口を綺麗にして、湿布を当てる作業はひどく痛かった上に、このくそったれの傷をきちんと治せる力が戻るまでは痛み続けるだろう。
ゼブランが手当てをしてくれる前もズキズキと疼いていたが、今では『疼く』と言うのはもはや充分な言葉ではなく『火箸を突っ込まれて腹をえぐられるような』痛みに近くなってきた。アンダースは眼をつぶって休みながら、この世を去ったシーカーが矢が抜くや否や力を消し去って治療をさせなかったことについて、それとそもそも彼の脚に矢を突き立てたテンプラーに向けても、心の中で選りすぐった強烈な罵倒を投げかけた。

しばらくして一人の衛兵が、携帯用の乾パンを数個とシチューをひときわ山盛りにした椀を持ってきてくれた。アンダースは大喜びで盆を受け取り、椀ごと丸呑みする勢いで食べ始めておおかた半分を胃に収めたところで、ようやく幸せなため息をついた。沢山の食べ物、友人と護衛が近くに居てくれて、そしてまた自由に――ブライディに誘拐されてからこっち、初めて彼は心が安らぐのを感じた。彼の脚の穴に開いた穴とセバスチャンとの物理的な距離を除けばかなり満足したと言っても良かった。

彼はアントニーとギュロームも見張りの衛兵に囲まれながらたき火の側に寄って、食べ物の載った盆を受けとるのを見た。彼らが火の側から振り向いたところで彼は手を振って、二人に側に座るよう指図した。近くに居たゼブランとフェンリスもすぐに彼の側へ寄ってきた。

彼はもう一匙シチューを口に入れ、かみ砕いて飲み込むと二人の方に匙を振って見せた。
「それで、そろそろ話を聞かせてくれるかな?」と彼は尋ねた。
「メイジがテンプラーになれるとは気がつかなかったよ。およそテンプラーとは正反対の存在だと思ったけどね」と彼は淡々と言った。

アントニーは微かに笑みを浮かべた。
「チャントリーの教義では、そのとおり」と彼は言って、それから表情を改めた。
「ほとんどのテンプラーが、チャントリーが運営する孤児院の出身だと言うことは知ってるな?」

アンダースは頷いた。アントニーは言葉を続けた。
「非公式な訓練は10歳頃から始まるにしても、正式なテンプラー候補生としての訓練は15歳の誕生日を過ぎるまでは始められない。表向きには、15歳を過ぎれば将来良い戦士になれるかどうか体格の見極めが付くからと言うことになっている。本当の理由は、ほとんどのメイジがその年頃までには力を示すようになるからだ。だが時には、その年頃でも自分の力を上手く隠すか、あるいはここに居るギュロームの様に」
彼はそう言うと大柄な男の腕に手を置いた。
「更に年を重ねるまで自らの能力に気付かない者も居る。彼の力がようやく発現した時には、ギュロームは既に20代の成人で、宣誓を終えた正式なテンプラーになっていた」

アンダースは難しい顔をした。
「そう言う人々を見つけて、チャントリーが幸せに思うとは思えないな」

アントニーは頷き厳しい表情となった。
「その通りだ。そういうメイジ‐テンプラーは、普通発見されるや否や『不幸な事故』に会う。それもシーカーズ 1の数多くの役目の一つだ――そういったメイジを発見して除去する」

フェンリスが口を挟んだ。
「なのにお前達はシーカーと行動を共にしていたのか?何故だ?」

「彼はギュロームの力に気がついていなかった。気付いていればとっくに殺していただろうね。何故僕達が彼と行動を共にしていたかについては……まあね。長い話だ。教えてくれ、テンプラーがチャントリーの一部となり、シーカーズによって監視を受けることになった、その経緯について君達はどの位知っている?」

アンダースは瞬きをした。
「チャントリーが、自分たちの目的のためにそういう組織を作ったんだと思っていたけど」

「ノン」ギュロームが声を上げた。
「テンプラー……最初にあった。チャントリーの前。シーカーの前。アンドラステ様の御慈悲の元、メイジを護るために

「アンドラステ様が生きていた時代であっても、テヴィンター帝国の支配下のメイジが全て悪では無かった」とアントニーが彼の説明を続けた。
「確かに暴君や残酷で無慈悲な主人、ブラッドメイジが居た……だが善き心を持った人々も居た、例え奴隷となっていても。それは今のテヴィンターでも同じだ」

フェンリスは居心地が悪そうに身体を揺すったが、それから声を上げた。
「そうだろうな」と彼は静かに同意した。「普通テヴィンターのメイジは、捕食者か獲物のどちらかだ――マジスターとアプレンティス、そしてマジスターの奴隷。それ以外で中間に位置する者はほとんど居ない、優れたヒーラー達は別としても……それも、彼らがマジスターに逆らわないよう用心していればの話だ」

アントニーは頷いた。
「まさにその通り。アンドラステ様の時代も同じだった。そして、メイジであっても彼女と共に戦おうという者達が居た。そこで疑問が持ち上がった――どうすればマジスターの手先のメイジに潜入されるのを防ぐことが出来るか、その答えが全てのメイジを殺すことと考える者達から、どうやって真の味方を護るか。
必要に迫られた彼らは、妥協点を見出した。彼女の軍勢に加わろうとするメイジは必ず一人以上の保証を受けること、さらに常に護衛と行動を共にして、彼らがメイジの使う魔法を監視すると共に、ただメイジであるという理由だけで傷つけようとする者から護ることになった」

アンダースは難しい顔をした。
「どうしてその話を、僕が今まで聞いたこともないんだろうか?」と彼は尋ねた。

「シャターンに関する聖歌の大部分が『不調和な詩編』として知られていないのと同じ理由だね。チャントリーがその知識を公にしようとしていないからだ。だがテンプラーの始まりに関する知識は、単なる聖歌よりも更に早く隠蔽されて、その知識はもう何世紀も完全に失われていた」

ゼブランが口を挟んだ。
「ふーん。それがどういう経緯で、護衛が看守に、自由なメイジが囚人に変わったのかな?」と彼は不思議そうに尋ねた。

アントニーはため息を着いた。
「様々な事情の相互作用だ。アンドラステ様の死後数十年の間は、テヴィンターに対する聖戦の間と事情は変わらなかった。多くのメイジが自由を保ち、彼らの護衛がその行動を監視し保証して、想像上の罪に基づいてメイジ達を傷つけようと考える者から彼らを護った。
それから、僕達の知るチャントリーが、主に三箇所からの共同作業で形作られ始めた。ミンラソウスと、ヴァル・ロヨーと、フェラルデンのテンプル・オブ・アンドラステのずっと狭い範囲から。彼女の墓所を取り囲む寺院を建造する際には、多くの魔法が使われたことが今では判っている。護衛されたメイジ達がその仕事を行った。まさに『テンプル騎士団』、今のテンプラーの名称はそれが由来だ」

陰鬱な表情が彼の顔を過ぎった。
「そしてその後、オーレイのチャントリーが『真実の探求者』、今のシーカーズを設立した。テヴィンター帝国と対立するが故にメイジに対する疑心と憎悪に基づく自警組織として。彼らは国境を見張り自由メイジ達を捕らえて、殺すか囚人としていった。『尋問』のためには拷問も自由に行われた。例えばアポステイト・メイジを保護する者は死によって罰せられることもあるといったような、現在のチャントリーの規則が定められたのもこの時代だ。
アンドラステ様の火刑にしても彼女の夫、マフェラスの裏切りが原因だったにもかかわらず、当時のシーカーズとチャントリーがメイジに責任をなすりつけた。彼らはメイジへの憎悪の炎を煽り立て、そしてオーレイ帝国がそれによって起こる争乱を彼らの周辺諸国への侵略と併合の理由に利用した。彼らの拡張政策と自由メイジに対する容赦ない尋問の内に、オーレイのチャントリーとシーカーズは、すぐにテンプル騎士団と相争うことになった」

アントニーはしばらく黙り込み、彼の空になった皿を見つめていた。
「その当時に何が起きたのか、全てのことが判っている訳では無い。歴史上の暗黒の期間で、ほとんどの記録が失われている。例えばアンドラステ寺院の在処もその一つだった。無論オーレイは彼女の遺灰を自らの手に入れようとしたが、テンプル騎士団は隠し通した。
そして大きな戦いが起き、オーレイが勝利した。テンプル騎士団は決断を迫られた。チャントリーの支配下に入り、メイジ達を自らの責任において護り続けるか、あるいは全てのメイジを殺させるか。発見された当時のごく僅かな記録によれば、非常に苦しい決断だったという。しかしテンプラー達は彼らの被保護者を護って生きることを選んだ、例えそれが巨大な牢獄の壁の中であっても。サークル・オブ・メジャイの誕生だ」

アントニーは再び顔を上げた。
「そしてシーカーズにテンプラー達を監視する権限が与えられた。恐らくはほんの二,三世代のうちに、彼らとチャントリーがテンプラーの存在意義を護衛から看守へとねじ曲げてしまった。チャントリーの支配下に僅かに残った自由メイジ達は今やアポステイトであると宣告され、死の恐怖に怯えながら生きることとなった。そしてアンドラステ寺院と自由メイジの誇り高き護衛であったテンプラーは、リリウム中毒のチャントリーの手足に成り下がり、テンプル騎士団当時の記録の多くが消し去られ、シーカーズによって行われる残虐行為の責めを負わされることになった」

「じゃあ、その失われた記録はいつ、どうやって発見されたんだ?」とアンダースがいぶかしげに尋ねた。

「ほとんどがテヴィンターに対する聖戦の間に」とアントニーは説明した。
「アンドラステ様の時代の記録と、チャントリー設立初期の記録はほとんどが破壊されたか……あるいは都合の良いようにねじ曲げられ、ヴァル・ロヨーのチャントリーとディヴァインの意向に沿うように変えられていた。しかしテヴィンター帝国にはオーレイのチャントリーの意向に従う理由は無かった、例え彼ら自身のチャントリーを設立するより前であっても。だから古い記録がそのまま残っていた。それらの記録が、聖戦の間本来の機能を果たしていたテンプラー達の興味を引くことになった。戦場におけるメイジ達の護衛部隊だ」

彼はアンダースにニヤリと笑って見せた。
「チャントリーは彼らの目的と合致する場合には、いつでもメイジの力をとことん利用した。とにかく、戦場では良くあることだけど、テンプラーと保護対象のメイジとの間にある程度の友情が育つことになった。そんな時に偶々彼らは、歴史に大いなる興味を持っていたマジスターの館を占拠し、その図書室でテンプラーの本来の役割について記された文書と出くわした……まあ、チャントリーがもう何世紀もの間、彼らの本来の目的をねじ曲げていたと気付く機は熟していたといえるだろうね。とりわけ戦争の混乱の中で補給路が断たれて多くのテンプラーがリリウムの禁断症状に苦しむことになった後では。さらに、この時テンプラーとしての技能はリリウム無しでも完璧に使えると多くの者が気付くことになった。テンプラーとして機能するためにリリウムが必要だという話は嘘だ、そう彼らは理解した」

彼は難しい顔をした。
「この一団が、言うなればテンプラー地下組織の中核となった。テンプラーとメイジを共にチャントリーの監視下から解き放つと決意した、テンプル騎士団の中の秘密結社だ。もちろん、ひどくゆっくりとした困難な道のりだった。多くの人々が踏み出しを誤り、僕達に判っているだけで少なくとも二度は、シーカーズに地下組織の一部の存在が暴かれたことがあった。どちらの場合も関係者全てが投獄され、殺された。それでも地下組織はゆっくりと広がり成長を続けた。そしてブライトの年だ、僕達が大きく飛躍したのは。僕達は目標の達成に近付く大きな一歩を踏み出した」

「アンドラステ寺院だ!」とゼブランが突然身体を起こして叫んだ。
「あそこには本当に数多くの本があった――ウィンが、そこに留まる時間が有ればと嘆いていたのを覚えているよ、そうすれば本が読めるのにと。チャントリーは後になって、聖遺灰を自分達で回収するために遠征隊を送り込んだと聞いたよ」と彼は付け加えると、訝しげな視線をテンプラー二人に向けた。

アントニーは驚いたようにゼブランを見つめた。
「どうしてそれを……?ああ、そうだとも!君のことは気付いて当然だったのに……その入れ墨の話は聞いていたから。君は英雄の同行者、ブライトの仲間達の一人のゼブランだね?」

ゼブランは白い歯を見せて笑った。
「まさしくその通り」

アントニーは頷き、エルフに小さな敬礼を送った。
「アンドラステ様の真の安息所を見られたとは、羨ましいな」と彼は言った。
「確かにチャントリーは聖遺灰を見つけ回収しようと遠征隊を送った。失敗したけどね。外周の寺院は見つかったが、あの山の頂上にある内院へ進むための道は皆閉ざされていた。ある道は氷に閉ざされ、ある道は完全に埋まっていた。それでも、外側の寺院自体が大いなる驚異に、失われた美と忘れ去られた知識に満ちていた。
幸運にも、地下組織は遠征隊が組織される際に、必要なお膳立てを整えることが出来た。実のところ遠征隊に参加したテンプラーのほとんどが地下組織の一員だったんだ。数多くの文献が回収され、僕達がこれまで知らなかった、あるいは推測するしか無かった事柄を埋めていった。『不調和な詩編』として除かれていたものを含む聖歌の初版もその中にあった。あるいはアンドラステ様自身が語られた言葉の記録さえも。チャントリーの現在の姿、つまりメイジに対する抑圧と、デーリッシュ・エルフへの不寛容を、彼女がテヴィンター帝国その物と同じくらい嫌悪しただろうというのは明らかだった」

「それらの記録によって、僕達は更に多くの同調者を得ることが出来た。同時に本物のネヴァラ条約 2 に書かれていた内容も知ることになった。テンプル騎士団がチャントリーに降伏し、その配下に入る際に交わされた真の条項について。何世紀もの間、チャントリーがそれらの条項を破っていたのはもはや明らかだ」

アンダースは数回瞬いた。
「すると、テンプラーはチャントリーから分かれる用意があるということか?」と彼は尋ねた。

アントニーは頷いた。
「ウイ。ああ、もちろんまだその動きを進める前に説得しなくてはいけない抵抗勢力は有ると思う、だけど既に騎士団内部の最高位にある人々の多くが僕達の一員となっている。それが何故、僕達二人がシーカー・レイナードに同行することになったかというところに繋がっていてね。彼は両方の組織において非常に高い地位にあり、それにディヴァインとも個人的に親しかった。
ディヴァインの目標が、フリー・マーチズを手始めとしてテダスをチャントリーの支配下に置くことにあると僕達は気が付いていたから、それに関する書き物を証拠として得たかった。だけど彼女はずる賢い女性で、この件に関してはほとんどが口頭での伝達のみで指示を出し、しかも大抵は仲介者を通していた……必要とあらば切り捨てることの出来る者達だ」

「オディール大司教がヴェイル大公に接触した時のように」とアンダースは厳しい声で言った。
「あくまで口頭での提案で、そのような提案があったことを証明する手立てさえ彼には無い」

アントニーはうなずいた。
「まさにその通り。だけどね、書き記された書類が必ずどこかにあるはずだ。とりわけディヴァインの計画に合意した者は、単なる口約束に基づいて計画を進める前により確実な証拠を求めるだろう。シーカー・レイナードがしばしばディヴァインの密使として働いていることは判っていたし、大司教の旅立ちと時を同じくして彼がここに出発することになった――もちろん、別々に。表向きはアポステイト・アンダースの逮捕を名目としていた」と彼はアンダースに向かって頷いて見せた。

「それで、僕達は彼が本当のところは一つ以上の目的を持っているのではないかと想定した、おそらくはディヴァインの密使として書類を運んでいるのではないかとね。それで騎士長官 3が、彼の最も信頼する部下をシーカーの任務に同行する一員の中に含めさせた」

「お前か?」とフェンリスは片方の眉を上げて聞いた。

「いいや」とアントニーは答え、それからニヤッと笑った
「ああ、もちろん彼も僕のことは充分信用してくれているよ、さもなければ彼の弟、ギュロームと同行させることは絶対になかっただろうね」と言って彼は大柄なテンプラーの方に手を振った。

周囲の人々のあからさまな驚きに、ギュロームは白い歯を見せて笑った。

騎士長官の弟がメイジだって!」アンダースは大きく息を飲んだ。
「メイカー、そんなの有りかよ!」

ギュロームは更に笑みを大きくした。
「ウイ。俺達は双子――そっくりじゃない。俺、魔法を持つ。レミ、持たない。それに彼はそれほど大きくない。それに彼は…あー」彼は言葉を切ると頭の周りで手をひらひらとさせて、助けを求めるようにアントニーを見た。

「金髪だ」と若い男は言葉を継いで、それから笑った。
「それにもっと髭が濃い。ともかく、長官の意向となればレイナードはギュロームの同行を断るわけには行かなかった、たとえ気に入らなくてもね。それで彼はギュロームに疑いの眼を向けるのに忙しくて僕のことは完璧に無視していた。僕達が組んでいることにさえ気がつかなかった位だ」

ギュロームが口を挟んだ。
「ウイ。アントニー、まるきり若者に見える――皆彼を無視する。彼と俺、俺達は相性が良い」と彼は愛しげに言うと、手を伸ばしてアントニーの髪をモシャモシャと掻き、若い男は慣れた風で辛抱強い笑みを浮かべた。

「すると、君達の任務はそれか?レイナードが運んでいる書類を持ち帰ること?」

アントニーは頷いた。
「もし可能なら、そうすることだった。特に世俗の権力を得ようとするディヴァインの計画について何か証拠が有れば」と彼は言って、表情を厳しくした。
「騎士長官は彼の任期中において再びメレディスのような団長の存在や、チャントリー外でのいかなる形であれ、世俗の権力を握ることを許すつもりはない。それに拡張主義者の侵略戦争にテンプラーや配下のメイジ達を利用させる意志もない。彼はディヴァインの意図について僕達の回収する書類や証書から証拠が得られ次第、テンプラーをチャントリー配下から切り離すための準備を整えている。
それにもし仮にそのような証拠が得られなくても、僕達地下組織は年内に割って出ることを決意している。その行動を起こす際には、少なくとも騎士長官の権威に従う団長以下のテンプラーは全てチャントリーの監視下から離れることになる、それと彼らの支配する地域についても」

「それで、それはどの位の数になるんだ?」とアンダースが聞いた。

アントニーは肩を竦めた。
「正確な数はその時になってみないと判らないだろうね、だけど今言えることは、レミが長官となってから任用した騎士団長の大部分が地下組織の一員で、それ以外にもテダス全域の重要な地位にある多くのテンプラーもそうだということだ。未だ存在しているサークルの大部分も、彼の指示に従うだろう」

彼の表情は一瞬にして固く決意するものになった。
「これは僕達が何世紀にも渡って共に目指してきた目標だ。ようやくそれを達成出来る時がやってきたからには、手をこまねいて見逃すつもりはない。魔法を支配するという名の下にメイジに、それにテンプラーに対しても行われてきた許し難い行為を、今こそ終わらせなければならない」

「その点については僕は全く異論はないね」とアンダースはきっぱりと言った。

「俺もだ」とフェンリスが静かに言い、アンダースは暖かく彼に微笑みかけた。

「さてと。じゃあシーカー・レイナードの私物の中に何か役に立ちそうな証拠が無いか、徹底的に調べるとしようか」とゼブランが言い、それからまた青ざめて冷や汗をかき始めたアンダースの様子を見て顔をしかめた。
「だけどその前にアンダースの傷口を手当てした方がよさそうだね。多少は治療出来そうか?」

「多分出来ると思う」とアンダースは言った。
「なるたけ早いこと済ませる方が良い。少なくとも今回はフェンリスに矢を取り除いて貰う必要は無いしね。僕の幸せな人生のために、もうあれだけは二度とごめんだ」


Notes:

  1. Seekers of the Truth
  2. Nevarran Accord:ディヴァイン歴1:20に締結され、小説”Asunder”内でLord Seeker Lambertが破棄する条約。これによってDA2内でヴァリックが語るとおり、テンプラーズもシーカーズもチャントリーの支配下から離れることになった。この小説は”Asunder”が出版されるより先に書かれたため、条約あるいはテンプル騎士団の成立の経緯も正典とは異なっている。そこはご勘弁を。
  3. Knight-Vigilant:適当な訳語が無いので、実在した騎士団の階級名から拝借。トップはKnight-Divine(騎士総長)だけど、恐らく名目だけの階級でディヴァイン兼務だろうと思われる。長官の下が団長(メレディスとか)になる。
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