第112章 放棄

「付けられているぞ」
ゼブランは、フェンリスと馬で並んで街を出ながら静かに注意した。

フェンリスは鼻先で笑った。
「やらせておけば良い、もし出来るものならな」と彼は言った。
「俺の手紙を持った使者はとっくに街を出ている」

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第111章 警告

セバスチャンがアンダースと共に彼の居室に戻ってきた時、既に昼食の準備は整い、ゼブランとフェンリスが静かに待っていた。セバスチャンは二人に頷いて座り、他の三人も席に着いた。彼らは黙ったまま料理を取り分け、アンダースは辛抱強く待ち、ゼブランはセバスチャンの顔を不思議そうに眺め、フェンリスは僅かに顔をしかめて三人の顔を見比べていた。

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第110章 導きを求めて

城内の自分の居室がある階に戻ってようやく、セバスチャンは表情を平静に保つのを止めた。厳しく眉をひそめ、眉間には深いしわがより、彼の口の両端は下がった。彼はそっと寝室に入り、教会へと着ていった服全てを脱ぎ捨てて、彼がアンダースを手伝って庭仕事をする時に着る簡素な服に着替えた。隠し階段を駆け下りてコテージに入り、メイジがそこに居ないことに気付いてがっかりした。もっとも犬達は居た。アンダースはまだ診療所に居るに違いないとセバスチャンは思いついた。オディールとの会談は彼が思っていたよりずっと短かったようだった。

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第109章 新たなる教理

セバスチャンはその朝、オディール大司教との会合に何を着て行くべきか、悶々と思い悩んでいた。彼の服は態度の声明として取られるだろうから、誤ったものであって欲しくはなかった。あまりに無頓着な服装では拙い――彼がこの会合を軽視しているかのように取られるだろう。あまりに簡素な服装では、まるで罪を悔いる罪人のように捉えられよう。かといってあまりに飾り立てれば虚飾と取られても仕方が無い。もちろん彼の鎧は論外だった、如何に彼の心が慰められようとも、今回に限れば敵対的で不信を示しかねない。

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第108章 正装

その日の昼食も、またひときわ静かだった。
「そこのピクルスを取ってくれないか」あるいは「ワインはどう?」というような会話以外、四人とも特に何を言うこともなく、皆この後の懇親会と晩餐を思って自らの考えに沈んでいた。

考え込む様子だったセバスチャンが、食事が終わり皆それぞれ立ち上がって部屋から出て行こうとした時ようやく顔を上げた。
「アンダース。私と一緒に来い」と彼は言った。
「お前に贈り物がある」

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第107章 到着

セバスチャンは寝室の鏡に映った自らの姿をもう一度眺め、一つ溜め息を付くと身体を翻した。彼が下流に置いた見張り台から、今朝最初の知らせが届いた。マイナンター川を西へ、スタークヘイブンに向かってやってくる大司教の船が視界に入ったという。見張り台を順に上ってくる知らせから判断すれば、彼女が街に入る前にどこかで停泊しない限り、今日の午後遅くには到着すると思われた。

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第106章 束の間の一時

コテージの扉が開く音を聞いて、アンダースは作業の手を止めて顔を上げ、セバスチャンが庭へと出て来るのを見て笑顔になった。しかしその笑顔は、セバスチャンのしかめ面と服装に気付いてすぐに心配顔に変わった。大公の服装は、およそ庭仕事に向いた服とは言えなかった。

「何かまずいことでも?」と彼は尋ねた。何かあるのは間違い無かった。

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第105章 気がかりな知らせ

セバスチャンは彼の護衛を扉の表に残して、大教母グリニスの執務室に入っていった。

「大教母様」と彼は頭を深々と下げて正式な挨拶を行った。

「ヴェイル大公」と彼女は同様に頭を下げて言った。
「どうぞ、お座り下さい」

「ありがとうございます」と彼は言って、二人は共に暖炉の側に置かれた、私的な話をするための椅子に腰を降ろした。アンズバーグの避難民についてグリニスと話し合うためここを訪れた時のことを思い出して、セバスチャンは思わず笑みを浮かべた。アンダースと子猫が一緒だった。

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第104章 周回するもの

アンダースは庭を横切って門と一体となった衛兵詰め所へ向かいながら、あたりを見渡しその日の午後からの大まかな作業計画を立てた。多事多端な種まき祭りの間に、庭の池は綺麗に底ざらえされていた。池の周りに新しく植物を植えなおしたかったし、他にも庭の所々で、育ちすぎた木々を剪定し刈り戻す必要があった。
しかし全体的に彼は仕事の進み具合にとても満足していて、とりわけお気に入りの、コテージの横に作った菜園では既に野菜や薬草が順調に育ち始めていた。

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第103章 ボディーガード

ゼブランが、ユアンのボディーガードとなる候補者を見つけたので会って欲しいと伝言を寄こした時、セバスチャンは喜んで忙しい日程を開け時間を作った。中町の小さな宿屋の一室にその二人を待たせてあるとゼブランは言っていた。

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