第122章 小休止

荷車が突然止まった振動で、アンダースは浅い眠りから目覚めた。何が起ころうとしているのかと彼は緊張し、どこか近くからくぐもった声と、それから荷車が傾いて、誰かが上に載ったドタドタという足音が聞こえた。
何かを引きずる音とドスンという重い音は、恐らく彼が入っている箱の上に置かれていた物が取り除かれたのだろう。それから微かに引きずる音が聞こえ、箱の板の隙間からちらりとたいまつか、あるいはランタンの様な光が見えた後、あたりの音は更にくぐもって聞こえるようになった。彼が立てるかも知れないどんな類の音も覆い隠すために、箱の上にキルトか厚い布が被せられたようだった。

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第121章 メイジの密輸

警告:この章には監禁、同意無しの緊縛、猿ぐつわ等の表現が含まれます。


ブライディは静かに上町を通り抜け、混み合った表通りを避けるようにアンダースを中町へと連れて行った。次第に混み合った街中で人々を避けて通るのは困難になり、彼女の神経質そうな様子は、誰かがひどく近くを通り過ぎる度にひどくなった。ようやく、彼らがほとんど下町の運河沿いのスラム街に近付いたところで、彼女は狭い側道――路地よりマシという程度の――へと入った。そしてその中程で、小さな家の奥まった扉を強く叩いた。

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第120章 見せかけ

フェンリスは皿の上の鶏肉を上品に一口分切り分けるとフォークを突き刺しながら、テーブルの向かい側に座ったアンダースとセバスチャンをちらりと眺めた。二人の姿を目にしてこみ上げる笑みを、彼は鶏肉を口に運んで覆い隠した。二人の親しげな様子がどれ程あからさまか、彼らには判っているのだろうか。意味ありげな眼差し、こぼれる笑み、そして時折触れ合う手。

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第119章 一目瞭然

アンダースが目を覚ました時、身体のあちこちが痛んだが彼は気にも留めなかった。彼はセバスチャンと共に横になり、まだ二人の脚は絡み合い腕は互いの身体を抱いていた。およそ寝心地が良いとは言えなかったが、それでも愛する者の腕に抱かれて目覚めるのは全世界中で一番素晴らしい目覚め方だった。彼は微笑んでセバスチャンに廻した腕に少しばかり力を込め、大公がもぞもぞと身体を動かして眼を覚ますのを感じた。彼は頭を捻ってセバスチャンの顔を見つめ、彼を見つめる男の眼に浮かぶ表情に、頭の上からつま先まで温かな震えが走るのを感じた。

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第118章 心の内に

(翻訳者注)この章には成人向け描写が含まれます。


一日が過ぎた。さらにもう一日。落ち着かない平穏の日々が続いたが、チャントリーや他の何かの動きを示す様子は無かった。セバスチャンはともかく当面の危険は去ったようだと思い始めたが、しかしまだこの先何が起きるか気がかりだった。彼に対して、彼の領民に、領地に。アンダースに。ここや他の場所にいる、彼の全ての友人達に。

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第117章 信頼する友人

セバスチャンは彼の机の椅子にもたれ掛かりあくびを抑えようとした。あるいは今朝の仕事は切り上げて、一寝入りした方が良かったかも知れない、昨晩はひどく遅くまで起きていたのだし――それに彼がようやく眠りに付く前にどれ程疲れていたかを考えれば。しかしながら彼の机の上には、最近の心配事に関する山ほどの仕事が待っていた。

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第116章 満ち足りた気怠さ

(翻訳者注)この章には成人向け描写が含まれます。


アンダースはセバスチャンの身体を今度は横に転がして彼の太腿に跨がり、上側の脚を持ち上げた。二人の身体からは汗が滴り落ちていた。彼らは最初たっぷりと油軟膏を使用したが、その後は伸ばした軟膏の残りと唾液、それに二人の精液が充分な潤滑剤となり、今のセバスチャンにはもはや追加の軟膏は必要無かった。アンダースが彼の中に再びゆっくりと突き入れると、セバスチャンは小さく快感の呻き声を漏らし、しわくちゃになったシーツを一瞬強く握りしめた。

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第115章 ついに

(翻訳者注)この章には成人向け描写が含まれます。


アンダースはほんの少しだけ心配になって、もう一度台所を見回した。今日の夕食はごく簡単な物だとしても、簡単なりにきちんとしておきたかった。少なくとも彼の台所には、今では時折友人達を招いて食事をすることもあって、かなりの食器や食べ物が揃っていた。彼は壁沿いの棚に並べられた沢山のワインから何本かを選び、彼とセバスチャンの好きなピクルスの瓶を幾つか取りだした。

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第114章 二人の意図

夕食の席に子供達を招いたのは本当に良かった、そうセバスチャンは思った。子供達と共に夕食を摂るのは、神経を尖らせた一日の完璧な解毒剤となった。ユアンのはしゃぎぶり、ナイウェンの静かな笑い顔、ピックがユアンの小さな侍従としての役目を果たしていくに従って、自信を深めている様子。

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第113章 待機

アッシュがセバスチャンの居間の、火の入っていない暖炉の側に置かれた肘掛け椅子で丸まってゴロゴロと静かに喉を鳴らしていたが、アンダースはそれを無視してうろうろと歩き回っていた。彼は大公とオディールとの面談がどうなったか心配だった。セバスチャンの拒否に対する彼女の反応はどうだったろうか。アンダースはそれが良くないことは十二分に想像が付いた。最大の心配は、どこまで悪いかと言うことだった。

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