第102章 海へ

ゼブランは早春の爽やかな空気を胸一杯に吸い込み、彼の側を馬に乗って進むフェンリスを見て微笑んだ。乗馬には実に相応しい素敵な朝だった。それに彼が二人の行き先を楽しみにしているのも、また確かだった。セバスチャンは昨日の昼食の席で突然、アサシンに一組の馬を贈ることにしたと言って彼を驚かせ、そして彼は今日自分で馬を選びに行くところだった。

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第101章 晩餐会

アンダースはひどい頭痛と共に目覚め、唸り声を上げた途端なおさらひどくなった。身動きをするまで彼は、身体の背中と横に掛かる温かな重みがガンウィンでも、その顎でもないことに気づかなかった……セバスチャンが、アンダースの背中にぴったり重なるように横になり、彼の腕がアンダースのウエストを覆っていた。

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第100章 二人の間で

(原作者注)100!100章!100しょーーーーーーぅ!
ここまで読んで下さった皆様に沢山の感謝を。まだもうちょっと続きます……
(翻訳者注)いつもコメントを下さるEMANON様が第100章記念イラストを描いて下さいました!
こちらでご覧下さいませ。Dragonage’s Fragment


廊下を曲がってフェンリスの部屋の扉が視界に入った時、その前に見慣れた顔の衛兵が二人、立っているのに気付いてゼブランは片方の眉を不思議そうに上げた。アンダースの護衛達だ。すると何かの用事であのメイジは彼と一緒に居るに違いない。彼は衛兵達に頷きながら微笑み、フェンリスの部屋へと入っていった。

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第99章 護るべきもの

イザベラは彼女に割り当てられた続き部屋を満足げに見渡した。
「まあ!良い部屋じゃない」と彼女は言い、たっぷりと詰め物の入った肘掛け椅子に腰を降ろして、足台にブーツに覆われた形の良い足を乗せ、ゼブランとフェンリスに向けて暖かい笑みを浮かべた。
「座って!あなた達がどうしてたか聞かせてちょうだい」と彼女は言った。

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第98章 遠くからの噂

セバスチャンは彼の座席の側に歩み寄って立ち、左側に居並ぶ彼の友人達がやはり座席の側に静かに立つ姿を眺めた。アンダースと二人で礼拝に訪れた最初の頃を思い出して、思わず笑みがこぼれた。怯えきったアンダース、片方の袖に子猫を隠し持ち、ただ二つだけの椅子が説教段のすぐ下にある、大公家専用の格別に広い区画に他から遠く離れて並べられ、その後ろには彼らの護衛のために、ただ一列の長椅子が置かれていた。

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第97章 愛しき者

原作者注:お待たせして済みません、ゼブランが手こずらせたのです。ですが更新をお待たせしただけの事はあると思います……
翻訳者注:原文に注意書きはありませんが、一応折り畳んでおきます。


「ゼブラン……ちょっと良いだろうか?」エルフが廊下の向こうから歩いてくるのを見て、片手を上げて挨拶しながらセバスチャンは声を掛けた。

ゼブランはにこやかに頷いた。フェンリスが朝駆けから戻ってくるまで、まだ少し時間があった。
「もちろん。何がお望みかな?」

「少し話をしたい。私の部屋に来ないか?」

アサシンはセバスチャンの後に続いて彼の部屋へ向かった。ユアンが数日前、彼の子犬のティーグと共に、いまや彼自身の居室となった廊下の反対側の部屋へ移ってからというもの、大公の居室はずっと静かになっていた。セバスチャンは椅子に腰掛け、ゼブランにも座るよう身振りで示した。

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第96章 更なる驚き

セバスチャンは村からやって来た若い女性を、面会のために彼の執務室へ連れてくるよう召使いに言いつけると、その部屋へ昇る階段をセリンと二人で歩きながら、彼の望まざる冒険行について語って聞かせた。セリンは部屋の前で立ち去り、セバスチャンがちょうど彼の机の後ろに座った所で、召使いがその女性と共に戻ってきた。

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第95章 出発と帰還

ようやくゴレンの館を離れられるようになるまで結局4日間、彼らはそこに滞在することになった。
スタークヘイブンの街へ知らせを届け、追加の衛兵とテンプラーの一部隊、それに聖職者二人が到着して、ジョハンナとゴレンの死の後始末を引き継ぐまでにはそれなりの日数が必要だった。
彼らが到着した後で、セバスチャンは彼らにこの地で起きた出来事を説明し、取りあえずの間はこの館を管理するため、彼の衛兵を割り当てる必要があった――どこかの時点で彼は適当な管財人を決める必要があったが、今のところ大公家はその家族が必要とするより遙かに数多くの家屋敷を持っていたから、あるいは売り払ってしまうことも考えられた。

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第94章 深い悲しみ

セバスチャンが目覚めて最初に見た物は、彼の顔のほんの数インチ先に有るアンダースの寝顔だった。彼は微笑んだ。夜の間に彼らは手を離していた。アンダースは片手の掌を下にして頬の下に押し込み、もう片方の手は二人の間で緩く握っていた。セバスチャンはじっと横たわり、彼の全てを見つめていた、例えば彼の睫毛が描き出す曲線を――髪の毛より少し暗い色の――あるいは彼の長い指を。
彼はまた少しやつれて見えた。この数日ろくに食べていなかったに違いない。彼らの置かれた状況がどれだけ気違い染みていたか考えれば、驚くには当たらなかった。それに彼自身の重傷を癒やし、昨日も大勢治療したとあれば、間違い無く相当な精力を消耗したことだろう。

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第93章 優しい慰め

アンダースは寝間着に着替えるため続き部屋へ戻った。彼はそれからしばらく、セバスチャンが間違い無く着替えを済ませられるよう十分時間を取った後、ようやく扉へ向かった。彼はためらい、ノックをしたものか、それともそのまま開けるのが良いかと悩んだ挙げ句、一つ大きく息を吐いて扉を押し開けた。

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