33.サークルメイジ、面会回数増加を請願

俺が食料品市場に着いたときには、アヴェリンはそこで俺を待っていた。彼女は身を乗り出して助手席の扉を開け、俺がシートに転がり込むや否や扉を閉めるのも待たずにアクセルを一杯に踏み込んだ。

「あなたの話が、その女の手の込んだ悪ふざけじゃあ無いことを祈るわ――どきなさい、そこのうすのろ!」そう言うと彼女はクラクションを数回鳴らした。

「もしそうだとしたら、あんまり良い冗談とは言えないな」俺は煙草に火を付けた。今この時点で、俺に出来ることは何も無さそうだった。
「彼女を慌てふためいて追いかけているのは、俺達だけじゃあ無いだろうな?」

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32.弁護側「カルタはドワーフ文化」と主張

俺は今まで、男とキスしたことは無かった。もっと正確に言うと、男にキスをされたことが無かった。アンダースはもちろん、香水や化粧の匂いの代わりに、海水と汗の入り混じった匂いがした。彼のうっすらと伸びた無精ひげが俺の顎を擦り、歯が俺の唇に当たっていたが、やっぱりキスはキスに違いは無く、俺には馴染みのある言葉だった。

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31.警察、違法漁船を一網打尽

俺とアンダースは、女性達がハングド・マンで飲んでいる所を見つけて、彼女らは俺達を助けると言った。イザベラはおもしろそうねと言い、そしてメリルはいつでもメイジを助けようとしていた。だがアンダースは一度も彼女を地下組織の友人に紹介しようとしなかった、多分それが賢明だったろう。メリルは秘密を守るのが得意では無さそうだったから。

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30.騎士団の残虐行為提訴、却下さる

友人達は皆、カーヴァーが居なくなって母さんがひどく寂しくならないように、しょっちゅう家を訪ねてきてくれた。カーヴァーもいずれその内休暇を取れるだろうが、すべて予定通りに進んだとしても、少なくとも半年間は彼の顔を見ることは無さそうだった。彼は手紙を送ってきたが、大して書くことも無いようだった。彼はまだ基礎訓練の最中で、実際ほとんどメイジと会うことさえ無かっただろう。

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29.カルタ捜索続く、17名逮捕

メリルとヴァリック、それに俺は午後ずっと、あの日の出来事をお互いの視点から語り合って過ごした。ヴァリックはメリルがブラッド・マジックを使ったことを気にも留めていない様だった。魔法と縁の無いドワーフとして、彼はどんな類の魔法にも関心を持たないように見えた。時にはこの街の全ての人々が、メイジに関わる問題の渦中に引きずり込まれているように思える時がある。ヴァリックの賢明な無関心さを、俺はぜひ見習いたいものだと思った。

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28.カルタ拠点、一斉検挙

誰かが俺の額を撫でていた。こそばゆかった。それから、煤と熱にやられた俺の気管から肺へと流れ込む魔法を感じた。俺は同じような手当てを前にも受けていて、これは一連の治療の最後に過ぎないと、何かが俺に告げていた。

それからしばらく、手が俺の頬に触れていた。

俺は両目を開けた。チカチカと突き刺すように痛かった。ちょっとの間、俺は頭上の天井を眺めて、それから眼を動かして人影に焦点を合わせた。

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27.港で大火!建物複数焼失

爽やかな秋の午後だった。地面は鮮やかな黄色と赤の落ち葉に覆われ、足で踏むたびにカサカサと乾いた音がした。俺の一家の農場とクレイグ家の農場を隔てる、小さな林を通り抜ける俺の鼻を冷気がツンと刺した。俺はそこでウサギを狩ろうとしていた。

少なくとも、俺は自分にそう言い聞かせていたが、実は何でも良かった。俺はただ父さんがいつもするように、腕にショットガンと獲物を抱え――それはウサギやカモ、あるいは大柄なシギのこともあった――落ち着いた確かな足取りで林から出てくる、それをやってみたかった。いつかそれは俺の役目になる。俺はそのとき12歳で、そろそろ練習を始める時だと思っていた。

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26.市立図書館、発砲事件後の改装終了

「トリップ、もし本当にカルタが関わっているのなら、きちんと通報するべきよ、それとバートランドが欲しがっている物も全部さらけだして」
とアヴェリンが言った。
「彼を庇ったところで何も得られ無いのよ、それにまさに今も、ヴァリックは本物の危険に晒されているかも知れない」

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25.スタークヘイブンメイジ、減刑を求む

フェンリスは翌朝もいつもの時間に現れたが、俺達にはそれほど多くの話題は無かった。それで俺達は挨拶を交わし、彼は漫画本に一時間ほど鼻先を埋めた後で、さよならを言ってまた帰って行った。
ヴァリックの店もまだ閉まっていた。彼が一度も店に戻ってきたような様子はなく、休業中の札も出っぱなしで、正面扉の下から投げ込まれた手紙が貯まっているのが見えた。ともかく、あの夜襲の後で、カルタがまた登場するような気配は一切伺えなかった。

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24.カークウォール・セインツ、決勝へ

俺たちは警察が到着する前にどうにか下町へ紛れ込んだ。ようやく見覚えのある通りに出たときには、教会は遙か後ろとなっていた。

「依頼者にはどう説明する?」俺たちが歩く速度を緩めると同時に、カーヴァーが尋ねた。

「判らん」俺は額を擦った。
「何が起きたのか、俺にもまだよく判ってないしな。クナリのメイジというのは普通なのか、フェンリス?一体全体そもそも何だって、あいつはあそこにいたんだ」

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