23.逃亡中のメイジ、列車内で捕縛さる

午前中に警察がやって来て、ヴァリックの店内をしばらく突きまわる前に全員に事情聴取を行った。ヴァリックは間違いなく一晩中ヤバい品物を隠していたに違いない。あるいは上手く鼻薬を嗅がせたか。とにかく警察は特に何も言う事は無い様だった。
俺がその強盗たちがカルタかも知れないといった途端、彼らは解決をあきらめた様子で帰り支度をし始め、俺たちが五体満足でいられたのはたいそう幸運だったと肩をすくめて見せた。

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22.スタークヘイブン・メイジ、市中へ逃亡か

一旦、俺にその気が無いことが判るとイザベラは即座に家まで送ると申し出た。そして俺も全く同じ理由で、丁寧にその申し出を断った。
結局彼女の言うことは何から何まで正しかった。俺は自分がロマンチストだと認めざるを得なかった。俺は誰かと単に楽しみのためだけに遊びで付き合うってことは出来ないようだ、たとえ相手が喜んでいるとしても。

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21.大司教、キュンの教義を批判

「それも良い考えね」とイザベラは俺のハンカチで、流れ落ちたマスカラの跡を拭き取りながら言った。
「映画スターねえ。映画界の中心と言えばタンターヴェイルだけど、一度も行ったことがないの。あたしが映画に出られると思って、トリップ?」

「一旦心を決めたら、君なら何だって出来るだろうな」俺達はゆっくりとイザベラの車の方へ歩いて戻った。他の二人は既にそこで俺達を待っていた。

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20.下町の殺人犯、捜査行き詰まる

カークウォールは三方向を高い山脈に囲まれていて、列車が開通するまでには随分と長い年月が掛かった。山の峠を越えて行く古の帝国街道の代わりに、今から70年ほど前ヴィンマーク山脈の足元に2マイル半のトンネルをくり貫いた時には、全部で76名の男達が死んだという。今でもほとんどの貨物や旅行客は海路でカークウォールへやって来た。

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19.上町の警官を増員、ドゥマー市長語る

「訳が判らねえ。俺はここに住んでるってのにチケットを手に入れられなかったんだぞ、一体全体何だってお前さんが持ってるんだ?」

俺は、澄ました不可思議な表情に見えることを願って、ニヤリとヴァリックに笑って見せた。ハングド・マンは今夜も人で溢れていた。ダンスフロアには入る限りのテーブルと椅子が並べられ、この夜のために雇われた不慣れなスタッフと相まって、あちこちで目を剥くような珍事を引き起こしていた。

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18.スタークヘイブンでサークル大火

俺が下町に戻る頃には、そろそろ日も暮れかけていた。普通ならハングド・マンが賑わい出すにはまだちょっと早い時分のはずだったが、俺が着いた時には既に客で溢れかえっていた。入り口には普段の倍の用心棒が立ち、普段ならおかわりを注文するとき以外はグラスから顔も上げないような常連客の間にさえ、どことなく興奮した雰囲気が漂っていた。

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17.大成功!地底回廊探検隊が帰還!

ホーク兄弟は地底回廊の探検隊に参加させて貰えませんでした。


フェンリスはギャムレンを好きになったとは言えなかった、多分ギャムレンのワインに対する下心が見え透いていたせいだろう。彼は俺の家にしょっちゅう来るようになった訳じゃないが、彼を直接招待して断られたことは一度も無かった。何にせよ、今すぐ花から花へ飛び回る蝶のような社交家に彼を変えるなんて無理な話だ。
彼はハングド・マンのヴァリックの部屋も時折訪れていた。彼らは上手く行っているようだった、もっともヴァリックと上手く行かない人物は、彼の長兄だけだが。

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16.メレディス、ブラッドマジックについて語る

「何か俺に用があったのか?」とフェンリスが階上に現れると尋ねた。彼はコートと帽子を脱いだ姿で、煙草が指の間で煙を上げていた。

「いいや、今のところは。ただ立ち寄っただけだ」俺は肩を竦めた。
「たまたまこの辺に来たからな」

彼が不思議に思ったとしても、表情には出さなかった。彼は頷いて俺に上がるよう手を振った。

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15.ヒューマンの遺体、下町で発見さる

章タイトルはすべて新聞の見出し風になっています。たまに号外も出ます。


俺達が鋳物工場のある地区に到着する頃には、物事はおかしくも面白くも無くなってきた。この場所はひどいところだ。そこら中に硫黄とタールと、メイカーのみがご存じの得体の知れない臭いが立ちこめていた。ここはカークウォールの工業の中心地でもあり、工場と倉庫が港までずっと建ち並んでいた。この夜遅くでさえ、工場の操業は続けられていた。 続きを読む

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14.今冬最新モード、オーレイより

「黒のよろず屋?」と俺は尋ねた。

「聞いたことはあるな」とヴァリックが言った。
「見たことがあるやつは知らないが。少なくとも、生きて話が出来る状態で戻ってきたやつは」

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