第82章 女達の日

アンダースはその日、犬と猫の友人達を少しだけでも外に連れ出せるよう夜明けよりずっと早い時間に起き出し、最初にセバスチャンが今日のために与えた服に着替えた。生成りの綿生地で仕立てられた単純なチュニックと、一切染めの施されていない柔らかい色合いの革のレギンス。今日は身分の違いも装飾も無意味となる日であり、皆同じこの服を着ると言うことだった。

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第81章 率直な話

アンダースはひとりでに眼を覚ました。まだ随分朝早くだったが十二分に眠れたようだった。彼はのびのびと伸びをすると、彼の動作に眠りを妨げられたアッシュの穏やかな不平は無視してベッドの上に座り込んだ。ベッドの横の低いテーブルには一つリンゴが残っていて、彼はそれに手を伸ばすと空っぽの胃袋を満たす手始めにかじり付いた。リンゴは長く保存されていたせいでぱさついていたが十分美味しく、彼はあっという間に平らげるとぎりぎりまで囓られた芯を盆に戻して、指を舐めて綺麗にした。

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第80章 浅い眠り

街を出て荘園に出かけるには実に良い日だった。遙か上空に一刷毛の雲が流れ、澄んだ青空には穏やかな陽射しが輝き、田園は春の新緑に彩られていた。彼らは早朝のまだ肌寒い頃に、騎乗した衛兵の一分隊と、一緒に連れて行く使用人でいっぱいの四輪馬車と、荘園を訪れる間に必要とする品々を積んだ荷馬車を引き連れて城を出発した。

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第79章 心からの贈り物

ゼブランは疲れて彼の部屋に戻ってきたが、それでもとても幸せな気分だった。セバスチャンが紹介してくれた男は素晴らしい腕を持ったの革職人で、しかもスタークヘイブンはアンティーヴァの隣国で有ることから、彼はアサシンが好むような様式での追加装備、例えば隠しポケットや短剣の鞘の付け方といったものに馴染みがあった。
彼らはゼブランの要求する仕様について長々と詳しく討論した。それに、セバスチャンが約束したとおり、ヴェイル大公からの直筆の紹介状はゼブランの鎧作成を名人の作業予定表の一番上に押し上げ、今仕上げに掛かっている他の仕事が終わり次第取りかかると約束してくれた。

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第78章 埋み火

アンダースはゆっくりとゼブランの腕を、その可動域を通じて曲げ伸ばしした。アサシンの肩に当てられた彼の手から青白い治療魔法の光が放たれていた。骨折後ずっと当てられていた添え木を外した後、彼は最初に肩から手首に至るまで幾らか治療を施して、可能な限りそこの硬直した筋肉を緩めた。それでもゼブランの最初の動作はのろのろとした弱々しいもので、明らかに痛みを伴っていた――その労力のせいでエルフは青ざめ額には汗が浮かんでいた。
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セバスチャンの金庫~DA世界の貨幣価値

パン屋の一番若い息子が掛けだしてくると、その素朴な顔に大きな笑みを浮かべてフェンリスに紙でくるまれた包みを手渡した。フェンリスは少年に微笑むと、銀貨一枚を包みの代価として、それに銅貨一枚を少年の駄賃として手渡し、それから馬を進ませた。

銀貨や金貨、これらは一体現代社会の貨幣に直すと幾らになるのだろうか。 続きを読む

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第77章 選択の自由

その朝目覚めた時、彼は心乱れる夢の記憶に当惑していた。とりあえずそのことは後で考えることにして、彼は暁の暗がりで起きてその日の支度をする、いつもの単純な日課に集中した。微かな光の中で部屋の家具はそれぞれ異なった濃淡の灰色にかろうじて見分けられた。ともあれ彼は何か目に留める必要があるわけでは無く、その場で立って寝間着を脱ぎ、きちんと畳んで枕の下に片付けた。寝具の端を引っ張って元のように伸ばし、表面を片手で均した後、裸足のまま衣装棚に行って綺麗な下着を取り出すとそれらを身につけた。
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第76章 熟練の技能

ゼブランは彼の手をフェンリスの肩に置くと、そこの引き締まった筋肉が薄い革鎧の下で動く感触をしばし楽しんだ。もう一人のエルフは横目で彼の方をちらりと見た。
「今晩また僕の部屋に来ない?」とゼブランは優しく尋ねると、人気のない階段を連れ立って下りていきながら、少しばかり彼にもたれ掛かるように身を乗り出した。

フェンリスは何も言わず、ただ頷いた。

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セバスチャンの食卓その2~スイーツ

彼の衣装棚について考えようかと思ったが、資料が少なすぎて挫折。というか、そもそもなぜメイジはローブを着ているのか。サークルメイジは「制服」だとしても、別にアンダースが着る必要は無いよね。
#まあそれはファンタジー界のお約束なんだけども。

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第75章 愉快な出来事

アンダースは彼の護衛にさよならを言うと、衛兵詰め所の内側の扉を閉めて庭に入った。また家に戻ってこられたことに彼の顔に自然と笑みがこぼれ、背筋が伸びるのを感じた。ガンウィンが茂みから転がりだしてきて、彼に駆け寄ると歓迎のしるしに尻尾を左右に熱狂的に振り回した。ハエリオニは小道に長く伸びて暖かい日の光を味わっている風だったが、彼の方を見て一応頭を上げると、小道の脇石を尻尾で二回パタパタと叩いた。

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